韓国で年末の大統領選挙に向けて「経済民主化」が大きな争点になっている。背景に格差拡大があり、「サムスン電子や現代自動車など大企業は大きな利益をあげているのに、潤っているのはごく一部の層だけで、国民経済には還元されていない」との不満がある。勢い、経済民主化のターゲットは大企業集団に向けられ、財閥改革という図式になっている。これまで何度も財閥改革が遡上にのぼったが、今回はどうなるのだろうか。
与野党とも財閥改革の必要性を認めている。今回、その核心は循環出資の規制だ。最大野党の民主統合党は全面禁止を打ち出しており、与党・セヌリ党は、新規の循環出資を禁止し、既存の循環出資は議決権に制限を設ける案を検討している。このような政界の動きに財界は「投資構造の規制は投資拡大に打撃を与える」と強く反発している。
A→B→C→Aという循環出資は、有力財閥で継続されている。この循環出資は財閥オーナー一家が、少ない資本で多くの系列企業の経営権を支配する手段でもある。だが、財閥の巨大化に伴い、その弊害を憂慮する声が高まっている。
最大の問題は、もし循環出資の輪の頂点に位置する中核企業が破綻すれば、その他系列企業が連鎖的に破綻する恐れが強いからだ。さらに、韓国経済も揺るがしかねない。一つの教訓がある。1997年の通貨危機を契機に3大財閥の大宇グループが崩壊したが、循環出資の影響が大きかったといわれている。
財閥改革のいまひとつのポイントは、資本力にものをいわせた他業種への進出だ。韓国ではこれを「タコ足」拡張と皮肉っている。サムスンが自動車事業に進出したが、経営悪化しルノーの傘下に入ったように、すべての業種を支配下におさめて競争できるほど世界は甘くない。業種別専門化をもっと追求すべきだろう。
韓国経済の発展は多くの企業が支えてきた。だが、グローバル企業と呼ばれるほど十分大きくなったのである。企業のあり方を問い直す時期にきているのではないか。経済民主化論議をむしろそのいい機会にしてほしい。(S)