サッカーJ2最終節に町田を3対0で破り、3季ぶりにJ1復帰を果たした湘南ベルマーレ。その劇的勝利の立役者が、今シーズンから就任した在日3世の新人監督、曺貴裁氏(43)だ。
熱血漢で知られる曺監督は、選手たちに「ネガティブになるな、ポジティブになれ」と指導し続けた。またDFを減らしFWを増やす攻撃的な3―4―3システムを最後まで貫くなど、精神面、戦術すべてに積極性を取り入れたことが勝利につながった。
Jリーグで活躍する在日選手は多いが、監督は99~2000年にヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)を率いた李国秀氏以来2人目だ。J1復帰という、チーム関係者も驚く大きな成果を挙げたことで、在日サッカー指導者への評価も今後高まっていくことだろう。
曺監督は1969年、京都生まれ。在日としてのアイデンティティーを大切にするよう親に教えられ、小さいときから本名のみで生活してきた。洛北高―早大から日立サッカー部に進む。DFとして柏、浦和、神戸でプレーし、湘南では05年ジュニアユース監督、09~11年トップチームコーチを務め、今シーズンから監督に就任した。
その信念は、「ミスを決して責めない。ミスから選手も指導者も学ぶ」ことだった。その言葉通り、負け試合から学んだことを次の勝利に生かし続けた。終盤で3試合敗戦、3試合引き分けと6試合勝ちが無くても、決してあわてなかった。
新人監督とは思えぬ冷静さと、選手たちから親しみを込めて「チョウさん」と呼ばれる強い信頼関係。プロ野球日本ハムの栗山監督が選手とコーチを信頼し、就任一年目で優勝を果たした指導力と、相通じるものがある。
来季はJ1で指揮を取る曺監督が、選手との信頼関係をもとに、どんな攻撃的試合をみせるか興味が尽きない。Jリーグに旋風を巻き起こしてほしい。(L)