韓国人は映画を観るのが大好きだ。その韓国で20日、自国映画を見た観客数が年間1億人の新記録が達成された。外国映画を合わせた観客動員数は20日現在で1億6900万人、年末には1億9000万人近くになる(昨年は1億5900万人)。日本の昨年の観客動員数1億4470万人(興行収入比で邦画55%、洋画45%)を大きく上回る。
韓国人は今年、年平均3・12回映画を観ているが、これは米、仏、豪州に次ぐ世界4位の数字だ。『王になった男』『泥棒たち』が1200万人超の大ヒット。また金基徳監督の『ピエタ』がベネチア映画祭で金獅子賞受賞と、まさに韓国映画ルネサンスと呼ぶにふさわしい盛況ぶりである。これほどの発展をだれが予想しただろうか。
韓国映画の始まりは、日本植民地時代の1919年に作られた『義理的仇討』だ。1926年には羅雲奎(ナ・ウンギュ)が植民地下の悲哀を描いた名作『アリラン』を発表。解放後は時代劇や恋愛映画などが多く作られたが、観客動員は低調で、外国映画の上映が映画界生存の頼みの綱だった。飛躍のきっかけは、90年代の大企業の映画産業参入、99年『シュリ』と01年『猟奇的な彼女』がヒットしてからである。
その後、06年にスクリーンクオータ(韓国映画の義務上映日数)が縮小され、ヒット作も生まれず、低迷が数年続いた。しかし、企画・シナリオ段階から多様性を模索し、今日の興隆につなげた。各種映画祭も活況を呈している。
だが、成功の一方で課題も指摘されている。投資会社の意向が強く、ヒット狙いの作品ばかり増えること、マーケティング費用がかかりすぎて制作費が制限されること、シネコンが増え、ミニシアターの営業が難しくなっていること、などである。これでは真の映画文化は育ちにくいだろう。幅広い観客層を納得させる、多様で質の高い作品作りを保証し、韓国映画のルネサンス時代を確かなものにしてほしいと願う。(L)