「重量挙げの女王」と呼ばれた国民的スター、張美蘭(29)が引退した。数々の世界記録を打ち立て、ロンドン五輪で韓国に金メダルをもたらしてくれた英雄も、年齢とけがには勝てなかった。心から「お疲れ様」と言いたい。
張美蘭は中学3年生だった99年、やはり重量挙げの選手だった父の張ホチョルさんの薦めで重量挙げを始めた。
重量挙げは韓国ではマイナー種目である。張美蘭が始めた時も、設備も支援も不十分だった。また重量挙げの女子選手への偏見もあったというが、彼女は持って生まれた才能と人並み外れた努力で、逆境を跳ね除けた。またバーベルを持ちあげる体力と体重を付けるため、夜食で毎日、肉を無理矢理食べ続けたという。
そして次々と記録を更新、01年には高校生で早くも韓国代表になり、昨年のロンドン五輪まで12年間、韓国代表の座にあった。世界選手権4連覇を果たし、08年北京五輪で金メダルを獲得。2000年代後半、75㌔超級では無敵ともいえる存在だった。
しかし、けがをおして出場したロンドン五輪では、最後の試技でバーベルを落とし4位。メダルを逃した。張は何も言わずバーベルにキスをし、手を置いて祈った。それはまさに「美しい敗者の姿」であり、全韓国民の涙を誘った。
「結果がはっきりと数字で表れる競技だからこそ、挑戦しがいがあった。数字に挑んだ日々は一生忘れられない」と引退会見で語ったが、そのスポーツに対する真摯な姿勢と謙虚な人柄は、多くの若者の手本であったといえるだろう。
張は昨年、父のアドバイスで張美蘭財団を設立した。マイナー競技を支援して後輩選手を育成するという。また国際オリンピック委員会(IOC)選手委員も目指す。健康維持のためダイエットも始めるという。張美蘭の「第2の人生」に熱い声援を送りたい。(L)