最近、朴槿惠・次期大統領の有力政策ブレーンのひとりが、「青年層が望む職場が多い知識・文化産業に政府が10兆ウォン規模の誘い水の投資をしなければならない」とし、ソフトウエア、文化コンテンツ、次世代インターネットなどを網羅する知識・文化産業育成政策の樹立を提案した。初期にこれだけの投資をすれば価値ある発展が可能で、毎年23万人の雇用も増えるとも試算している。2つの点で意味ある提案だと思う。
まず、21世紀は「知識基盤社会の時代」といわれるが、その時代潮流に適している。現代社会は、新しい知識・情報・技術があらゆる領域で活動の基盤として重要性を増しており、インターネットの普及一つをとっても、社会は大きく変わってきている。特に韓国の場合、近年の経済発展はIT(情報技術)が支え、さらにドラマ、K-POPなど韓流ブームで文化産業領域も広がりをみせており、その素地が十分ある。
第2に人材ミスマッチの解消にもつながる。韓国の現状は、大学進学率が80%を超え世界トップクラスだが、大学を卒業しても希望する職場に就けず、青年失業者が増えている。その一方で、中小企業は人手不足で悩んでいる。大卒に見合う職場を望む結果、このようなミスマッチが生じているだけに、知識・文化産業の裾野が広がれば、青年雇用問題解決の助けになる。
一例として、ソウル郊外に「本の町」として知られる「坡州(パジュ)出版都市」がある。出版社や印刷会社、紙や本の流通企業などを一箇所に集めた、世界でも珍しい出版文化クラスターだ。現在、出版や印刷のほか、映像なども含む文化産業を集積した新産業都市として開発中で、新たな産業創出の試みといえそうだ。
知識産業、文化産業はともに知識に基づき、創意的な精神活動で付加価値を創出する産業だ。その領域はソフトウエア・エンジニアリングから映画・音楽に至るまで幅広く、知識文化産業という概念で一括りにする人もいる。韓国は高い教育水準が大いなる武器だ。次代の成長エンジンとなる産業創出に積極的に取り組んでほしい。(S)