在日3世のプロサッカー選手、鄭大世が今季から韓国Kリーグの水原でプレーする。2010年サッカーワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に、北朝鮮代表として安英学とともに在日選手として初めてW杯に出場し、開会式で見せた涙が、在日の苦難の歩みを表現したものとして、韓国でも話題になった選手だ。
Jリーグで活躍後、独リーグに移り、昨年1月、独ブンデスリーガ1部のFCケルンに移籍したが、出場機会が減ったため水原移籍を決意したという。ルーツの地、韓国でプレーしたいという思いもあったという。「FWとして15得点は挙げたい」と決意を語っているが、欧州リーグでの経験を生かして、Kリーグに新風を吹き込み、W杯ブラジル対戦時の輝きを取り戻してほしいと熱望する。
もう一つ注目したい点がある。アジアサッカー連盟(AFC)から、「国際大会は北代表であっても、AFCチャンピオンズリーグに韓国代表としての出場を認める」との決定が下されたのだ。
鄭大世は父が韓国籍、母が朝鮮籍。鄭自身は韓国籍だが、民族学校出身でもあることから、幼い時から本名で生活し、北代表入りを目指してきた。そして国際サッカー連盟が「韓国国籍でも北代表になれる」という特例を認めた経緯がある。アジアチャンピオンズリーグでは逆に韓国代表となるわけだが、ぜひ水原を優勝に導いてほしい。
日本のスポーツ界では過去、多くの在日選手が日本国籍を取得して、日本名でプレーしてきた歴史がある。しかし鄭大世は本名で、逆に在日をアピールしてきた。それが在日の新世代から支持を集めてもきた。在日選手が韓・日・北の3カ国でプレーした例としては、安英学がいる。彼はサッカーを通して3カ国の懸け橋になりたいと願ってきた。鄭も思いは同じだと聞く。
新たな舞台で、韓国の人々には在日への関心、次代を担う在日の子どもたちには夢と希望を与えてほしい。(L)