朴槿惠大統領は就任演説で「第2の漢江の奇跡」を訴えた。1970年代、故朴正熙(パク・チョンヒ)大統領時代にまさに奇跡のような高度成長を実現し、人々はこれを指して「漢江の奇跡」と呼んだ。朴大統領はこれの再現を呼びかけたものだが、もちろん当時のような2桁成長は望むべくもない。ここには新たに別のメッセージが込められていると見るべきだろう。それは、新たな成長パターンの創出である。
「漢江の奇跡」の最大の原動力は、韓国が誇る人的資源にほかならない。だが、現在のまま所得不平等を放置すれば、社会的な対立が必然的に起き、成長をダウンさせ、人的資源の毀損も憂慮される。
「ジニ係数」という所得分配の不平等の程度を示す指標がある。0と1との間の数字で表現され、1に近いほど不平等が深刻であることを示すが、1997年0・264だったジニ係数が、2010年には0・315まで上昇した。
最近、金洛年(キム・ナクニョン)・東国大教授が国税庁のデータを利用してはじき出したジニ係数は昨年0・371で、OECD(経済協力開発機構)加盟国中、チリ、メキシコ、トルコ、米国に次ぐ5番目の高さだった。韓国は主要国で最も不平等な国に分類されてしまった。
実際に、国民の大多数は韓国の所得格差が深刻だと肌で感じている。月収100万ウォン前後の低賃金労働者がいるかと思えば、年収数十億ウォンの高所得者も増えている。「経済民主化」が叫ばれているのは、このような貧富の差の広がりが背景にある。
「貧しい人はますます貧しくなり、金持ちはますます金持ちになる」現象は、中間層が崩壊した結果によるものだ。韓国経済を支えてきた中間層が薄くなっているのは深刻だ。
駐韓日本大使館の道上尚史公使は韓国社会の特徴を論じる中で、「たくましい向上心、英語力、積極的な海外進出意欲」を挙げていた。韓の人的資源を高く評価するものだが、そのような人的資源を生かすためにも、所得格差を是正しなければならない。新たな「漢江の奇跡」は、社会の不平等をなくす済社会の実現でもあろう。素晴らしい手本をみせてほしい。(S)