米国映画『クール・ランニング』をご覧になった方も多いだろう。常夏の国ジャマイカの陸上選手がボブスレーに初挑戦し、遂に冬季五輪出場権を獲得するまでの苦闘を描いた作品だ。練習施設も予算も無い中で世界の強豪に挑む選手たちの姿が共感を呼ぶと同時に、ボブスレーの魅力を伝えてくれた。
そのボブスレーの国際大会アメリカズカップで、韓国代表が2人乗り競技で優勝した。韓国の国際大会優勝は史上初の快挙だ。これで来シーズンのボブスレーワールドカップ(W杯)出場権も獲得。そのW杯でも好成績を収めれば、ソチ五輪の出場権を獲得できる。絶対に勝ち取ってほしい。
ボブスレーは、独特の形状のそりで氷が張ったコースを滑走する競技で、時速140㌔にも達し、「氷上のF1」とも呼ばれる。1924年に五輪の正式種目になったが、アジア勢にはほとんど縁がないスポーツだ。韓国で始まったのは10年ほど前で、競技人口も数えるほどしかいない。他競技で代表から外れた選手が取り組み、専用競技場もなく、そりも低質な中古品しかなかった。選手たちは外国の競技場を転々としながら練習する有り様で、控え選手がいないのでコーチが自ら大会選手として登録するほど選手層が薄い。アメリカズカップには08年から出場、1年目は15位で、失格も多かった。
その現状を打破すべく、新代表は欧州で訓練して強豪国の技術を学んだ。そりの速度を出すため外国人選手に負けない筋力増強と体重増加に努め、相撲取りのように無理矢理に食事したという。企業援助で新型ボブスレーを購入できたことも、そりの性能が左右するボブスレー競技にとって心強い支援となった。これらの努力が一挙に花開き、強豪国が驚く「韓国版クール・ランニング」を実現した。
16年には平昌に専用競技場も誕生する。ソチ、そして平昌で太極旗を掲げてほしい。(L)