音でスタートを知らせることが出来ないため、旗を振るか光線で合図する。観客は拍手の代わりに手を振って選手を称える。ブルガリアの首都ソフィアでこのほど開かれた、聴覚障害者五輪「デフリンピック」のひとコマだ。
1924年に始まった同大会に、韓国は85年から出場。今回は115人の選手団が参加し、金メダル19個を獲得して総合3位に入る好成績を挙げた。射撃2冠の金ギヒョン選手は、一般の国際大会でもメダルを狙えるほどの実力で、14年仁川アジア大会の出場も目指すという。障害に負けない選手たちの活躍に、心から拍手を送りたい。
聴覚障害には先天的なものと、病気や事故などによる後天的なものがある。韓国には約28万人いる(2011年現在、言語障害含む)。
以前、韓国出身の聴覚障害者で、英語と日本語を独学した金修琳(キムスーリン)さんの話を聞いたことがある。聴覚障害者の場合、外見では障害者とわからないため、社会の誤解や偏見にさいなまれることが多々あり、金さんも嫌な思いを何度も経験したという。障害者自身がチャレンジ精神で生きることの大切さと同時に、障害者に対する社会の理解を訴えていたのが印象的だった。
韓国では2000年、「障害者地域社会促進施設」として、聴覚・言語障害者のための手話通訳センターの設置が進められ、現在、全国184カ所に設置されている。障害者差別禁止法が制定され、字幕放送が増えるなど、社会整備は徐々に整ってきた。しかし一方で、社会の偏見はいまだ残っており、雇用など社会参加の道も不十分だ。
韓国は今年初め、知的障害者の国際スポーツ大会「スペシャルオリンピックス」を開催するなど、障害者スポーツの誘致に力を入れている。大会開催を通して、障害者の人権と共生社会実現を訴えるためだ。デフリンピックでの韓国勢の奮闘が、韓国での障害者の人権伸長の、更なる一助になることを望む。(L)