「私の(拉致という)厳しい体験は、東アジアの不安定な状況の結果として起きた。緊張状態の緩和のため、いまこそ文化交流が大切だ。個々人が文化交流を拡大していこう」
北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんが24日、釜山で講演したが、その時の発言である。2002年の帰国後、蓮池さんが韓国で講演したのは初めてだ。
自らの過酷な体験があるからこそ、東アジアの平和を希求するその姿勢に、強い共感を覚える。
歴史認識などをめぐり韓日は厳しい関係が続いているが日本ではチャン・グンソク、東方神起など韓流スターや、韓国ミュージカルの夏休み公演など、どこも大人気。
一方、韓国では村上春樹の小説が売り上げトップを走り、日本の漫画「進撃の巨人」が人気を集めるなど、日流が続いている。
両国の相互往来も拡大しており、昨年は約556万人、今年も7月までで約326万人に達した。
朴槿惠大統領は光復節の演説で、「韓日両国民の間では信頼のすそ野は広く、大勢の人が相互に文化を共有し近づいている」と演説したが、まさにその通りだろう。
韓日の緊張関係を解決するには時間を要するかもしれないが、だからこそ文化交流が途切れないようにしたい。
9月下旬には、恒例の「韓日・日韓交流お祭り」が開かれる。また10月には、韓流10周年の記念イベントが開かれる予定だ。
交流おまつりのタイトルは「めばえる希望、未来へ」だという。その言葉通り、未来への希望をつなぐ催しにしてもらいたい。
潘基文・国連事務総長は先日、「未来志向のためにも正しい歴史認識が大切」と述べ、東アジアの平和を訴えた。相互の文化交流を拡大しつつ、歴史認識の共有化と戦後補償などの解決を長期的視野で進める。そんな関係を再構築できればと思う。(L)