「私には夢がある」と叫ぶマーチン・ルーサー・キング牧師の姿を、ニュース映像などで見た人も多いだろう。1963年8月28日、米国で人種差別撤廃を求めた「ワシントン大行進」での演説だ。行進には20万人以上の黒人・白人が共に参加。それが後の、あらゆる差別を禁止する公民権法制定につながった。
このワシントン大行進に学び、在日へのヘイトスピーチ(憎悪表現)などに反対する「差別撤廃 東京大行進」が日本・在日の市民有志で行われた。民族対立を煽り、いらぬ緊張が社会に強いられたのが解消していく契機になればと思う。今後の広がりを期待したい。
レイシスト(排外主義者)の活動が目立つようになったのは、この数年のことだ。特に東京や大阪のコリアンタウンで、「反韓デモ」がたびたび行われ、店舗や通行人にまで嫌がらせをするほどエスカレートした。
新大久保は2001年、韓国人留学生の李秀賢さんが、線路に転落した日本人を助けようとして亡くなった地でもある。コリアンタウンの発展を街の活性化と韓日友好、多民族共生社会につなげようとの動きもあっただけに、反韓デモの影響などによる観光客減少や店舗撤退の動きなどは、本当に残念だ。
ドイツなどは差別行為を禁ずる法律があり、違反者には罰則が課される。一方、日本は95年に「人種差別撤廃条約」に加入したにもかかわらず、条約を履行するための法整備などが行われていない。
東京大行進の参加者は、「人種差別撤廃条約を誠実に履行する」ことを求め、人種、民族、皮膚の色、血統、宗教、心身の障害、性などに基づくあらゆる差別をなくそうと訴えた。21~22日には東京で「韓日・日韓交流おまつり」が開かれ、高円宮妃殿下や安倍首相夫人も参加した。東京大行進も交流おまつり参加者も、思いは韓日が「仲良くしよう」だ。その心を韓日両国民で共有していきたい。(L)