韓国で数年前、独立運動家・安重根(アン・ジュングン)の義挙100周年記念ミュージカルが上演された。印象的だったのは、安重根も伊藤博文も両国それぞれの立場で愛国者だったという客観的な視点で描かれたことだ。最近、安重根は英雄かテロリストかという、相反する対立があったが、このミュージカルを両国の関係者が見ていたら、不毛な対立どころか、歴史談義で盛り上がったと思うと残念だった。
そんな危機意識は、両国の国会議員も抱いていたのだろう。先日都内で開かれた韓日・日韓議員連盟の合同総会で、韓国、日本に中国を加えた韓日中3カ国による共同歴史教科書の作成を韓日両政府に働きかける共同声明が採択された。重要な提案であり、ぜひ実現させてほしい。
韓日両国はこれまで、歴史共同研究を2度実施したが、意見の相違が大きかった。今回の会見では共同教科書について、「一歩踏み込んで次の方向を考えたい」と表明している。両議員連盟のみならず、両国の歴史学者や市民団体からも積極的なアイデアを出してもらいたい。
共同歴史教科書を実現した例は、フランスとドイツが有名だ。第2次世界大戦が終わって間もなく、共同歴史教科書作りの声が上がったが、なかなか進まなかった。
しかし、半世紀を経て両国は「不幸な過去の歴史を払拭し、和解と統合の新しい歴史を作るため」の共通教科書委員会を立ち上げた。その背景には、両国民の強い要望があったという。現在は高校生用の共同歴史教科書が、両国で使われている。
韓日中も歴史認識の違いが目立つ昨今だからこそ、逆に取り組むチャンスではないだろうか。韓日間ではすでに、教職員や学者などが、「韓日歴史共通教材」と題した歴史授業副読本を実際に作り、授業などで一部活用例がある。
韓日中3カ国の共同教科書作りへの誠実な取り組みと、それを支持する国民の声を期待したい。(L)