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2014/03/28

<鳳仙花>◆共生描くサッカー映画『裸足の夢』◆

 多民族共生を願って、東京・新大久保のコリアンタウンで開催中の「新大久保ドラマ映画祭」で、一本の映画が静かな話題を呼んでいる。

 長い内戦と貧困に苦しんだ東ティモールの子どもたちが、2003年韓国の元実業団選手にサッカーを学び、チーム結成から1年足らずで少年国際大会に出場する実話を映画化した、『裸足の夢』(金泰均監督、2010年度作品)だ。

 サッカーシューズを履いたこともなく、ひたすら裸足でボールを追う東ティモールの少年たちを見た元韓国人選手が、ボールとシューズを用意してサッカーを教え、広島で開かれた国際大会に寄付を集めて出場、ついには優勝を果たす。内戦によって家族や友人を殺される経験をしながらも、笑顔でサッカーを楽しむ東ティモールの子どもたちの純真な姿、元韓国人選手との国境を越えた友情は、韓国でも公開時に評判となった。特に家族同士で殺し合いをした二つの家庭の少年が、同じチームでプレーし、心を開き合うまでの姿は感動的だった。

 彼らが日本の国際大会に出場するに当たっては、東ティモール在住の日本人も協力。さらに広島ロケが行われた2010年1月には、広島市民約1000人がエキストラとして出場した。いわば韓日関係者が協力して実現させた国際大会参加であり、映画化であった。まさに同映画祭での上映にふさわしい作品といえる。

 在日系の映画会社が配給を行っているが、一般公開の機会に恵まれず、映画祭などでの上映が中心だが、今年2月のヨコハマ・フットボール映画祭で上映され、観客賞を受賞する人気ぶりだった。

 6月には、サッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会が開かれる。サッカーと世界平和への関心が高まる時期に、ぜひ一般公開されればと願う。また実在の韓国人監督は、いまも東ティモールで少年たちにサッカーを教えている。支援の声の高まりにもつながってほしい。(L)