ネパールやインドでは、両手を胸の前で合わせて「ナマステ」と言う。「あなたを尊重します」という意味だが、普段のあいさつ言葉で、相手との信頼関係を表現する。
この「ナマステ」をタイトルにした小説が9年前、韓国で出版されて反響を呼んだ。韓国に難民として渡ってきたネパール人男性が、職場や社会で不当な差別を受ける姿を描き、偏見を無くそうと訴えた。ラストでは韓国人女性との愛を育む姿を通して、未来への希望と多文化共生の大切さを訴えた。作家パク・ボムジンの力作だ。
この小説のモデルとなったのは、ネパール人のラマ・ダマ・パサンさんだ。98年に難民として韓国に渡ってきたラマさんは、工事現場など多くの職業を経験した。06年に韓国人女性と結婚して、ソウルの明洞聖堂前でネパール料理の食堂を開いた。3人の子どもに恵まれ、妻の母の面倒もみている。
この16年間、まじめに生きてきたラマさんが最近、韓国国籍取得を申請したが認められないでいると、外国人労働者を支援する会などが訴え、人権に配慮した対応を求めている。
韓国は経済発展とともに外国人が増え、昨年は約157万人の外国人が居住しており、この数年は年間1万人以上が韓国国籍を取得するまでになった。
超高齢社会を迎える韓国は、外国人人材の活用をこれまで以上に迫られている。この間、外国人優秀人材の二重国籍を容認し、アイスホッケーではカナダ出身の韓国代表も現れた。多文化共生を促進する法整備を行い、各地に多文化共生センターも作られた。しかし一方で、東南アジア系の外国人労働者に対する偏見はいまだあると、人権団体などは指摘している。
同じ超高齢社会が進む日本も、外国人労働力の受け入れを促進させると先日発表した。両国とも「ナマステ」の精神で外国人を受け入れてほしい。それふが、経済発展と多文化共生社会につながると思う。(L)