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2014/06/06

<鳳仙花>◆朝鮮建国の功臣、鄭道伝(チョン・ドジョン)の復権◆

 KBSで放送中の大河ドラマ「鄭道伝」が人気を集めている。1988年に出版された小説「鄭道伝」を基にして作られたドラマで、主人公の鄭道伝にチョ・ジェヒョンが扮し、ユ・ドングンが李成桂役の全60話。テーマは「民がこれ以上辛くない新しい国を作る」ための戦いだ。

 この史劇は、高麗の恭愍王殺害直前の1374年から鄭道伝が殺害された98年までの24年間を鄭道伝の視点で描いている。ドラマではあるが、制作陣が最も心血を注いだのは時代考証で、登場人物すべての伝記も参照したという。

 約600年前の高麗末、「百姓のための国」を主唱し、「易姓革命」を実現した鄭道伝は朝鮮建国の一等功臣だった。彼は政治家でありながら、思想家でもあり、音楽や歴史、医術、風水地理にも通じた万能の天才といわれ、法制や軍政など国家運営の基礎を築いた極めて興味深い人物だ。朝鮮朝の初代国王となった太祖・李成桂より役割が大きかったとされる。

 彼の思想の原点は、流刑時代に民百姓の荒れ果てた暮らしを見てきた経験にあり、著書「朝鮮経国典」で「民こそが国の根本であり、政治を行う王や士族は民のために存在するものだ」と喝破した。盧武鉉大統領は生前、KBSの番組で「鄭道伝を見習いたい」と語ったことがあるが、吟味してみたい言葉だ。

 また、国政運営においては、個人である国王がすべての実権を握るのではなく、宰相を中心とした士大夫(貴族)が軍事・財政・人事などを掌握し政治をリードすべきだと主張した。今日の内閣制をほうふつさせるものだが、強力な王権こそ社会の安定をもたらすと考えたライバル李芳遠(後の第3代国王)と対立、暗殺される。様々な史劇で逆賊・奸臣など否定的に描かれることが多かったが、今回のドラマは復権の完結版となりそうだ。

 朝鮮朝は、世界史でもまれな単一王朝で519年間続いた。政治の目的は民衆の利福にあるとした「民本主義」の理念と君主と宰相の協力政治システムこそ、王朝を支える本質だったといえよう。鄭道伝が夢見た民本主義は今日においても追求する価値があるのではないか。(S)