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2014/11/07

<鳳仙花>◆韓国プロ球界復帰の金星根(キム・ソングン)監督に期待◆

 韓国で「野神」(野球の神様)と評される金星根氏(71)が、3年ぶりにプロ球界に復帰した。韓国シリーズ6度出場の名門チームながら、3年連続最下位に終わったハンファ・イーグルスを立て直すため、来季の監督に任命されたのだ。金氏は、韓国プロ野球で監督通算1234勝という歴代2位の記録を持つ。その手腕でハンファを復活させ、いまや韓国の国民的スポーツとなったプロ野球人気を、さらに盛り上げてほしい。

 金氏は、京都生まれの在日2世。中学1年生のときに交通事故で父親を亡くした。兄や姉が働いて家計を支え、金氏を桂高校に進学させたという。同校野球部で左腕のエースとして活躍し、1959年には在日同胞野球団の主力投手として韓国の大会に出場し、好成績を挙げた。同校卒業後、日本の社会人野球を目指すが就職先が見つからなかった。これが金氏の人生を大きく変えることになる。

 「生活費を稼いで自分と家族が生きるため」に、韓国社会人野球入りを決意。韓日国交正常化前の1964年だったため、永住帰国せざるを得なかったが、あえてその道を選んだ。韓国では逆に在日ということで白眼視されることもあったが、日本で培った技術とハングリー精神を武器にエースとして活躍した。

 現役引退後、実業団チームで監督に就く。82年に韓国プロ野球が発足すると、OBベアーズの投手コーチを経て監督に就任。以後、弱小チームの立て直しに手腕を発揮した。選手やファンからの信頼が厚い一方で、球団フロントと運営方針で対立し、何度も解任されている。妥協を許さない野球への情熱が、そうさせたのだろう。

 70歳を過ぎてなお勝利への執念を見せる金氏は、ハンファ再建へ守備重視の野球を掲げた。日本プロ球界のコーチ経験者を呼び寄せ、日本式の緻密な野球を取り入れるとともに、選手たちの意識改革にも取り組んでいる。来季の戦いを大いに期待したい。(L)