李明博大統領と鳩山悠紀夫首相は9日、青瓦台(大統領府)で行った韓日首脳会談で両国関係の発展と友情を誓い合い、パートナー関係を強化することを確認した。単独首脳会談、拡大首脳会談、昼食会と約3時間にわたり、和やかな雰囲気の中、両国間の懸案をはじめ様々な問題について虚心坦懐に意見交換がなされ、信頼関係を深めた3時間だった。会談後には25分間の共同記者会見も行われた。これとは別に両首脳夫人が和気藹々と交流を深めた。会談ではどんな話し合いが行われ、会談の外ではどんな交流がなされたのか、振り返ってみた。
◆両国関係
両首脳は、歴史認識を共有しながら、「未来志向的なパートナー関係」を再確認した。鳩山首相は会談で「日韓は最も重要な隣国関係であり、対北朝鮮政策を含む鳩山政権のアジア外交、東アジア共同体構想のなかで中核となる」と再三強調し、韓日関係を最も重視していることを示した。これと関連、青瓦台関係者は、「10日の韓日中首脳会談で韓日首脳会談を行えるにもかかわらず、鳩山首相が1日前にソウルを訪れたこと自体、示唆するところが大きい」と語った。
また、今回の首脳会談では首脳同士が定期的に相互訪問するシャトル外交の継続も確認する一方、経済、文化など多分野での交流・協力を進めることで一致した。
両首脳は、今回の会談で韓日関係発展への決意を新たにしたようだ。李大統領は、「われわれは近くて近い韓日関係の発展のため緊密に協力していくことを確認した」と述べ、鳩山首相は「近くて近い国にしようという心に共感できた」と述べた。
◆東アジア共同体
鳩山民主党政権がマニフェストで掲げた東アジア共同体構想について、李大統領は「時間はかかるかもしれないが、友愛の精神で努力すれば不可能ではないと思う。他の国々で実現しているのに東アジアだけできないはずはない」と肯定的な考えを示した。しかし、会見では「実現するための前提としていくつかの問題を解決する必要がある」と語った。これは参加国の範囲などがまだ決まっていない現実を指したものもみられる。
鳩山首相は「日韓両国は価値観を共有しており、共に取り組んでいきたい」として、「両国が中心となってアジア諸国との協力を深めながら、東アジア共同体構想を実現させようという心を李大統領と共有できてうれしい」と述べた。
◆歴史認識問題
鳩山首相は、村山首相談話に触れ、「政府と国民一人ひとりが(談話の意思と心を)大変重要な考えだと理解することが重要だ」として、「新政権はまっすぐ、歴史を正しくみつめる勇気をもっている」と強調した。李大統領は、このような鳩山首相の姿勢を「高く評価する」と述べた。
村山富市首相(当時)は1995年、太平洋戦争終結50周年に際して、「植民地支配と侵略によってアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた。痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表する」との談話を発表した。これが歴史認識問題に関する日本政府の公式見解となっている。
ただし鳩山首相は会見で「積極かつ前向きに、常に歴史を直視する勇気と持たねばならない」としながらも「国民の理解を得るには時間が必要だという点に理解してほしい」と述べた。これは歴史認識問題の完全解決にはなお時間がかかるとの考えを示したものだ。
◆北朝鮮核問題
李大統領は北朝鮮が核放棄などを完全に履行した上で初めて包括的な支援を行う「グランド・バーゲン」構想を説明。鳩山首相は、これを評価した。
また、6者協議が重要であることで認識を同じくし、北朝鮮以外の5者が共同歩調をとることで一致した。李大統領は会見で、「北朝鮮の6者協議復帰の可能性について、「確信している」と述べ、「北朝鮮はわれわれが提案した問題について深く検討するだろう。北朝鮮が核放棄する道を開くものであり、北朝鮮はこれがわれわれにできる最後の道だと考えるだろう」と強調した。
◆経済・環境
韓日の民間レベルの経済交流の発展にお互いに協力することを確認。特に、中小企業交流について、協力を進めることで一致した。鳩山首相は4月にソウルで開かれた部品素材供給・調達見本市のような取り組みを強化したいと表明。
環境問題では、「韓日グリーンパートナーシップ構想」の推進で一致し、具体化へ向け協議することに合意。また、地球温暖化防止ための気候変動対策に関する協力を強化することにした。
国際会議での協力強化にも合意。来年韓国で開かれるG20(主要20カ国・地域)首脳会議と日本で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の準備ために緊密に協力することになった。
◆文化交流
両首脳は、韓日関係を揺ぎない強固な関係にしていくためには、国民レベルの交流を強化していく必要があるとの見解で一致した。「日韓交流おまつり」の成功を歓迎し、継続へ向けて協力することでも一致。第3期韓日文化交流会議の早期発足に合意した。また、韓日中の大学間交流の推進について、早期立ち上げへ韓日間で論議することでも一致した。
◆料理で交流
李明博大統領と鳩山由紀夫首相が首脳会談に臨む中、韓日首脳の夫人同士も「キムチ外交」を展開。金潤玉夫人と鳩山幸夫人は、ソウル市内の韓国伝統飲食研究所を訪れ、キムチ作りを体験した。
幸夫人がキムチの具を素手でつかむと、潤玉夫人は「最近ではビニール手袋をはめてキムチを漬ける女性が多い」と説明。幸夫人は「素手でキムチを漬けてみたかった」と応じた。
また、潤玉夫人が幸夫人にキムチを直接食べさせるなど、親密ぶりをアピール。その際、幸夫人が韓国語で「ごはんも下さい」と言って笑いを誘った。
◆伝統酒で乾杯
昼食では、韓国のどぶろく「マッコルリ」が出され、続いてワインが出されたが、鳩山夫妻は「マッコルリをいただきたい」とワインを断ったという。韓国で伝統的な庶民の酒の代表であるマッコリが首脳外交の席に登場するのは初めて。
出されたマッコルリは、韓国産のサツマイモと日本産のサツマイモを交配させた紫色サツマイモを原料にしたもの。
◆仁寺洞を散策
鳩山夫妻は柳仁村・文化体育観光部長官の案内でソウル市内の観光地、仁寺洞を訪れ、伝統茶屋などに立ち寄った。
鳩山夫妻は約30分にわたり仁寺洞を散策し、地元の人たちや日本人観光客と握手をしたり写真撮影にも応じた。