◆中国で現地完結型の経営体制めざす◆
2011年のサムスングループの中国における売上高は、合計58兆ウォン(510億ドル)と累積投資額105億ドルの約5倍、従業員数は10万7000人に達している。売上高、従業員数のほぼ半分がサムスン電子であり、中国サムスン23社の中でも中核企業はサムスン電子であることに変わりはない。
05年に社名変更した中国サムスンは、半導体、携帯電話、家電製品、重工業、建設、証券などあらゆる分野で中国に進出し、「第2のサムスン建設」という新たな戦略を展開している。サムスン電子は、中国を生産拠点、販売市場として活用するだけではなく、生産、販売から研究開発(R&D)、デザインまでの一貫した経営体制を完成することで、中国企業として根をおろす究極の現地化へと踏み込んでいる。
具体的には、家電、携帯電話、半導体などの巨大な消費市場として中国を見ているだけでなく、中国を世界に向けての供給基地としての位置づけである。先進国・中進国のニーズにも応えられるように、研究開発とデザイン・ソフト開発の拠点としての役割が大きくなっている(図表1、2)。サムスン電子は、中国及び世界市場に中低級品の「メードインチャイナ(made in China)」で席巻していくのではなく、高級製品、先端技術を含む製品群をグローバル市場に輸出できる「クリエイテッドインチャイナ(Created in China)」の確立を目指している。
中国でグローバルな製品開発を急いでいる要因は、中国内の人件費の上昇、税制上の恩恵の縮小に伴うコスト上昇などである。低付加価値製品だけでは工場を運営できない状況になっている。このため低付加価値の生産はベトナムなどに拠点を移し、中国では現地化製品と世界に輸出する中高級品の開発・生産に注力している。
サムスン電子は、中国に世界の顧客ニーズに応じられるグローバルなデザインセンターの確立を急いでいる。サムスン電子のデザイン経営センターの主要任務の一つが、デザインバンク・システムの運営である。これはデザイナーが、デザインと関連した各種情報とデザインを、簡単に検索して活用できるデータベースである。このシステムには使われなかったデザインも保管され、いつでも活用可能な状態に蓄積されている。デザインネットワークが構築されたことにより、中国設計研究所(上海)は、中国人の消費パターンの分析等を通して、中国人の文化やライフスタイルに適応したデザイン開発を行うとともに、グローバルデザインとして世界に通用するデザインの開発というふたつの役割を担っている。
サムスン電子は2年周期で基本デザインを見直している。最初の1年で現地の流行を分析して商品化戦略を計画し、2年目に産業および技術トレンドを勘案して新しいデザインを創る。
サムスン電子は、中国内で売れる多くの製品を生産しながら、今後は西部地域での半導体生産など先端製品に至るまで、グローバル市場のニーズに対応するための多様な製品を生産できる拠点、流通販売ネットワーク、研究開発、デザイン・ソフト開発など一貫経営体制を築きつつある。サムスン電子が目指している中国に「第2のサムスン建設」の狙いは、現地完結型の経営体制を構築することに他ならない。