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2013/01/18

<Korea Watch>サムスン研究 第31回 サムスン電子ジャパン                                                 日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • サムスン研究 第31回 サムスン電子ジャパン
  • サムスン研究 第31回 サムスン電子ジャパン②

◆スマホ成功で最後の砦となるか日本市場◆

 2012年5月、サムスングループ各社を統合していた日本サムスンは解体された。日本サムスンはなくなり、サムスン電子、サムスン物産など18社が独立法人や事務所の形態で運営されることになった。

 1994年に設立され18年間続いた日本サムスンは、統合本社体制から系列会社別の独立経営体制へと移行した訳である(図表①)。

 先進国の中で唯一残された日本市場(本丸)という最後の砦、ここをサムスングループはどのように攻略していくのだろうか。サムスン電子は、これまで何度か日本市場への参入を試みたが失敗に終わっていた。02年に日本の液晶テレビ市場に進出したが07年に撤退した。その間、欧米で爆発的に売れた薄型液晶テレビ「ボルドー」も投入したが、日本市場での反応は鈍く撤退に追い込まれた経験がある。サムスン電子は世界テレビ市場でシェアトップを誇るものの、日本市場への参入を試みるたびに苦汁を舐めてきた。

 ところが最近、サムスン製品に対する日本の消費者のイメージは、サムスン電子が世界トップ企業であると認知されているとともに、NTTドコモを通じて10年10月に発売したスマートフォン(高機能携帯電話)「ギャラクシー」シリーズが、日本市場においてもヒットしていることから激変している。

 日本市場開拓の主役が、サムスン電子ジャパン株式会社(12年にサムスンテレコムジャパン株式会社から社名変更)である。現在同社は、携帯電話分野及び通信ネットワーク分野を主として、日本事業を展開している(図表②)。

 サムスン電子は、今年下半期から世界初のテレビ用132㌢(55型) OLEDパネル量産およびOLEDテレビ発売に向けてLG電子と競争している。スマートフォンに次いで、これらの先端製品が日本市場に流れ込んでくるのは、もはや時間の問題である。

 その他、リチウムイオン電池では世界シェアでパナソニック(11年5月三洋電機を子会社化)がサムスンSDIにシェアで抜かれ、今年に入り水をあけられ始めている。サムスンSDIは、11年10月にニチコン株式会社(本社京都市)と家庭用蓄電システムの独占供給のための契約を締結し、ここを通じて14年まで日本国内の家庭用蓄電システム市場の占有率30%以上を獲得するという戦略である。

 わが国を代表するエレクトロニクス・メーカーは、韓国勢と中国勢の追い上げの前にグローバル市場でも守勢に立たされている。

 08年にサムスン経済研究所は、水処理事業が親環境であることから、今後サムスングループの重要なビジネスになると報告した。

 これを受けてサムスングループは、3年の歳月を掛けて戦略を練ってきた。サムスンエンジニアリングが水処理事業に多くの投資を行っており、11年はバーレーン王国が発注した5億5000万㌦規模のムハラク地域(第2の都市)の下水処理施設を受注した。この事業分野では韓国初の海外BOT事業〔建設(Build)保有(Own)運営(Operate)し、事業期間終了後に所有権を移転する方式〕となった。

 サムスンエンジニアリングは、プラントの建設と運営だけでなくファイナンシングにも参加することによって、トータルサービスを提供する専門ディベロッパーへと変貌しつつある。今後サムスングループは、サムスンエンジニアリングをコア企業として、新興国で逆浸透膜(RO)の海水淡水化事業に進出する計画である。

 昨年末から韓国大企業による水処理ビジネスに進出ラッシュが始まっており、日本企業がこれまで優位に立っていたこの分野でのグローバル市場でも、サムスングループは、得意とする新興国市場で日本の追撃が始まろうとしている。