今年創立20周年を迎える駐日韓国企業連合会の新会長に楊仁集(ヤン・インジプ)・眞露社長が就任した。楊会長に韓日経済協力のあり方などを聞いた。
――新会長としての抱負をお聞かせください。
私で17代となるが、これまでの会長は韓国を代表する大企業の日本法人代表が役割を果たしてきた。正直、ハイト眞露本社の海外総括社長とは言え、眞露という日本法人の社長が果たして韓企連の会長職を務めることが適任かどうかという思いはあるが、期待に応えたい。
組織としては、会員の情報交流や隘路事項に対して知恵を出し合い解決していく基本的な方針は変わらないが、外部との連携強化も進めたい。日本には、米国や中国など、様々な国の経済団体がある。それらの団体との交流を深めながら、国際的な情報交換や協力が可能ではないかと考えている。韓企連は会員数が300社を超えているわけで、それに相応しいグローバルな交流も進める計画だ。
特に今年は、韓企連創立20周年を迎える。11月ごろをめどに記念式を開催する準備を進めているが、意義のあるものにしたいと考えている。
――日本市場の開拓策は。
これまで6年間、副会長を務めてきたが、以前とは異なり、各企業が自ら解決できる力を付けてきた分、日本での商業文化に対する難しさに関する相談は少なくなっている。
酒類業界に関して言えば、日本市場の最大の魅力は信用・信頼の「信」が命のように守られていることだ。これは経営者としては非常に魅力的だ。もちろん目に見えない壁はたくさんあるが、それはどの国にもある。日本も例外なく壁があるのは事実だ。しかし、それは市場を本当に理解しようと努力して勉強すれば、十分克服可能であるということを眞露が証明した。
日本の酒類業界でトップ10に入る唯一の外国企業が眞露だ。世界的なハイネケンやバドワイザーもトップ10には入っていない。眞露のような韓国の焼酎メーカーが入っていることが、その証しとなるだろう。
――韓流ブームの影響は。
一般論を申し上げれば、間違いなく韓流はポジティブな影響があった。韓国文化に関心を持つ女性が、年配の方から若年層まで広がり、層に厚みが出た。これが韓国に対するイメージアップに貢献したのではないかと思う。
ただ、製品に関しては、消費者の認識はそれほど高まっていないと考える。サムスン電子のスマートフォン「ギャラクシー」の好調がある一方、現代自動車の乗用車部門撤退が例として挙げられる。日本の消費者には韓国製品に対しての信頼感は、定着していないと思う。
眞露に関して言えば、私が社長に就任した6年前に戻るが、当時は緑と黄色のラベルのJINROとチャミスルという焼酎の2種類がメーンで、これが弊社製品の99・7%を占めた。今は日本限定品だけで20品目を超える。焼酎の比率は35%を割っている。
眞露はいまや日本では焼酎会社ではない。半分以上をビール類が占めており、PB(プライベートブランド)製品としてイオンなどで販売している。イオンでは日本のビールメーカーに続き、弊社のプライムラガーという製品が2位だ。この事実はほとんど知られていない。私が社長に就任して以来の6年間でビジネスモデルを変えてきたので、弊社に関しては韓流ブームとはあまり関係ないと思う。
――韓日経済交流のあり方について。
基本的にどの国でも産業でも、共通点もあればそうでない点もある。そこで大事なのは、こちらが正しくて、そちらは間違っているという考え方ではなく、お互いの違いを認めなければならないことだ。
韓国と日本の場合、貿易赤字に関しては、今の仕組みのままでは永遠に解決できないと思う。メイド・イン・コリアの韓国製品が世界ではたくさん売れているが、その中身の相当数の部品や素材は日本製に依存しており、実は韓日はWINWINの関係にある。
韓国の大企業が頑張れば頑張るほど日本の関連会社も儲かるわけで、まさに分担すればいいのではないか。逆に同じところで競争するのは賢いとは言えない。
一つの例として、眞露は今、日本酒の輸出を代行している。日本の酒類業界は、1995年から年々縮小傾向にあり、中でも日本に数多くある酒蔵など、伝統的な酒類メーカーが苦戦している。そこを何とか助けたいと思った。
08年から、日本酒を韓国に輸出したのを皮切りに、今では110を超える銘柄の日本酒を全世界に向けて輸出している。酒類業界からは感謝の言葉を頂いている。
私どもとしては、それを利益商材として扱っているわけでなく、これまで20年間あまり韓国産の焼酎を日本で販売してきた。20年を機に、日本の業界に何か恩返しができないかと考え、いいものをつくっているのに苦戦している日本酒メーカーをサポートすることになった。
個人的な考えでは日本酒はワインに負ける理由がないと思っている。最近では南米や欧州、韓国やニュージーランド、アフリカまで全世界に輸出している。
このように国を超え、お互いに助け合おうと、依存し合っているわけで、これこそがWINWINの関係と言えるのではないか。