◆現実となった「サンドイッチ危機論」◆
李健熙会長は就任20周年をむかえた2007年「サンドイッチ危機論」と「5、6年後危機論」を訴え、「中国に追われて日本に遅れをとるサンドイッチの状態」と話し、「サムスンだけでなく韓国全体が気づかなければ5、6年後大きな混乱をむかえるだろう」と警告した。経営に復帰した10年には「今が本当の危機だ。10年内にサムスンを代表する製品が消えるだろう」と危機感を社内に訴え続けてきた。
中低価格のスマホ市場で中国やインド企業の躍進が目覚しく、サムスン電子の屋台骨を揺るがしている。中国では政府の外資系への牽制や現地企業への優遇策という目に見えない競争相手とも戦わなくてはならない。同時に、アップルなどの宿敵とも中国のプレミアム市場で真剣勝負を繰り広げなくてはならない。だが、中国のスマホ市場で14年第2四半期に小米がサムスン電子を追い抜き、シェア1位に躍り出た(図表)。イギリスの市場調査会社カナリスによれば、この期間に小米は1499万台を売り、サムスン電子よりシェアで2ポイントも上回った。小米は創業5年での快挙である。小米に続いてレノボ、華為、クールパッド、ZTEなどの中国企業が上位に顔を出す。
香港の市場調査会社カウンターポイント・リサーチによれば、14年第2四半期のインド携帯電話市場を集計した結果、現地企業のマイクロマックスの市場占有率が16・6%を記録し、サムスン電子(14・4%)とノキア(10・9%)を抜いたことが明らかとなった。スマホ分野ではサムスン電子が市場占有率25・3%で1位を堅持しているが、マイクロマックスが19・1%と6・2ポイント差まで迫っている。携帯電話の巨大市場である中国とインド市場で起こっていることは、現地企業の低価格製品戦略にサムスン電子が対応できない事態に陥っていることである。
中国のスマホメーカーは、最近サムスン電子をベンチマーキングして、部品の垂直系列化を進め、ブランド戦略にも励んでいる。たとえば華為は、社内にサムスン電子専門担当チームを設けて成功戦略を分析している。中国企業がサムスン電子をベンチマーキングするために、専門担当チームを設けるのは異例中の異例である。小米は中国市場にとどまらず、年初のシンガポール進出に続きインド、インドネシア、ブラジル、メキシコ、ロシアなど世界10カ国にまで販路を広げる計画だ。小米CEOの雷軍氏は、中国のスティーブ・ジョブズとの評価を受ける人物である。ZTEなども中国だけでなく海外市場進出のために海外の人材をヘッドハンティングしている。
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