◆加速するベトナムシフト、最後の砦◆
中国企業の激しい追い上げに対抗するために、サムスン電子が海外拠点として注目しているのがベトナムである。これまで中国やタイに拠点を構えていた工場も続々とベトナムにシフトしている(図表)。中国などの人件費が上昇するにつれ、ベトナムはその半分、タイと比較すれば、ほぼ3分の1という安い人件費が大きな魅力となっている。洗濯機、電子レンジ、テレビはタイからベトナムへ、掃除機は韓国から直接ベトナムへ、中国で生産していた一部の携帯電話とパソコンもベトナムに工場を移転している。ベトナムは生産拠点として魅力的な国というだけでなく、消費性向が高い所得層の増加で、市場の展望も明るい。ベトナムは2025年には人口約1億人(13年約9170万人、国連人口計画推計)に達すると予想され、消費性向が高い20~30代の若い人口が00年の2600万人から15年3300万人に急増する。
サムスン電子のベトナムシフトに合わせて、サムスンディスプレイ、サムスン電機、サムスン物産、サムスンSDI、サムスンSDS、サムスン生命、サムスン火災、第一企画など系列会社もすべて進出している。グループ全体のベトナム投資額だけでも、現在合計76億㌦に達する。
サムスン電子がベトナム北部地域に20億㌦を投入した携帯電話第2工場は、この3月完工し、試験的な生産を開始した。サムスン電子は第2工場の年間生産能力を年末までに第1工場並みの1億2000万台に引き上げる計画だ。これでベトナムはサムスン電子最大の携帯電話生産拠点となり、15年には年間約3億台に達する可能性もある。
ベトナムにとっても経済力を誇示する機会が訪れた。13年サムスン電子第1工場の携帯電話は、ベトナム全輸出の18%を占め、来年フル稼働に入れば、その比率は30%に達するであろう。ベトナム電子産業協会(VEIA)の発表では、13年のスマートフォン及び電子製品輸出は、前年対比 50%以上増加の321億㌦を記録し、ベトナムの輸出品目の第1位に躍り出た。ベトナムの輸出のトップの座にあったのは繊維・アパレル製品であった。
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