◆シリコンバレー発「技術革命の成否」◆
サムスン電子は、当時注目されていた半導体事業への足がかりを築いていた時期の1983年7月、米国シリコンバレーに現地法人(SSTI)を設立した。90年代の世界的なバブル経済が謳歌されていた時期まで、シリコンバレーを拠点としたベンチャー企業のM&Aに積極的であった。ところが当時投資したベンチャー企業はほとんど失敗し、傷が癒えるまでに10年以上の年月を要した。ケガの痕跡は今なお「eサムスン」の流れを汲む最後の生存会社が残るものの、シリコンバレーをM&Aの拠点とした動きが再び本格化している。最近では、李在鎔サムスン電子副会長が米国に出張すると、必ず立ち寄る場所がサンノゼのシリコンバレーである。
この行動がハッキリ現れたのは2012年頃からである。サムスン電子の役員クラスの認識は、追撃者(fast follower)から先導者(first mover)に変貌する必要を強く感じており、3年ほど前からシリコンバレーの革新文化を組織に移植する試みが本格化していた。13年7月、サムスン電子は、シリコンバレー研究開発(R&D)センター新社屋の起工式を行った。合計3億㌦が投資され、今年7月完工する予定である(図表)。李副会長は昨年から「シリコンバレー発技術革命」を強調しており、この具体化に向けて第一歩が踏み出されたわけである。
サムスン電子は、新社屋の完成とともに全米に分散している研究者をシリコンバレーに集結させる計画で、戦略的に注目されるのは、サムスン電子がソフトウエア人材の豊富なシリコンバレーで雇用を拡大していることである。シリコンバレーに勤めるサムスン電子役職員数は、すでに500人を越えている。毎年20~30%のテンポで研究員の増員を図り、博士レベルの人材だけでも2000人を補強する計画である。
これまで米国では12年と13年に集中的に研究所を増やしており、現在サムスンリサーチアメリカ(SRA)、サムスン戦略革新センター(SSIC)、オープンイノベーションセンター(OIC)など研究所とシンクタンクチームなど合わせて17カ所に達している。
未来事業を開発するシンクタンクチームなどの研究機関を、SRAが管轄し、シリコンバレーの企業との交流およびM&Aなど開放型革新を主導する機能は、ソウル本社のグローバルイノベーションセンター(GIC)を軸に、現地SSIC、OICの連携である。SSICは部品部門の開放型革新を担当する組織で、主な企業との技術提携およびM&Aを実行する。SSICはサムスン電子の核心技術の競争力確保および知的財産権(IP)管理および確保にも注力している。
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