◆失速したギャラクシーS6「李在鎔フォン」◆
サムスン電子は1980年代後半から今日まで、打つ手が次々と的を射る好循環を経験してきた。半導体からディスプレー、携帯電話、スマートフォンへと高成長・高収益事業が相次いだ。ところが2014年4月にリリースしたギャラクシーS5が期待ほどに売れず、その挽回に送り出された今年4月販売のギャラクシーS6も不振で、販売開始から3カ月後には韓国内やユーロ圏での価格引き下げや米国では4K高画質テレビのおまけにするなど、サムスン神話に陰りがちらつき始めている。李在鎔副会長の主導で開発したギャラクシーS6およびギャラクシーS6エッジの「李在鎔フォン」は、大々的な販売促進活動にもかかわらず売上げが伸びず、最近ではこの表現がパッタリ消えた。
サムスン電子の携帯電話の発展経緯を簡単に振り返ってみると、94年に生産を開始したが、当初品質に大きな瑕疵があり、翌年に役職員の面前で約15万台を焼くという「火あぶり式」を行うなどの荒療治を経て、役職員へ品質に対する意識改革が行われた。その後サムスン電子の携帯電話は急成長を遂げ、05年に1億台、09年には2億台を突破した。07年6月にアップルがアイフォーンを発売すると、サムスン電子は遅れること約3年、10年6月にギャラクシーの販売を開始した。サムスン電子の強みは、半導体、ディスプレーなど主なコア部品を自ら生産できることにある。瞬く間に販売台数においてアップルに追いつき、12年にはアップルを抜き去るという離れ業を演じたのであった。
今年の苦戦は、世界最大のスマホ市場である中国で象徴的に現れた。市場調査機関HISの発表資料によると、15年第2四半期にサムスン電子は中国市場で出荷台数基準として占有率が9%(前期9・7%)にとどまり、4位から5位に転落した。1位は占有率18%を占めた中国シャオミ、次いで華為が16%の2位、アップル12%の3位、VIVO10%4位という順であった。足元に6位の中国企業が迫っており、5位圏外に転落するのは時間の問題である。
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