◆加速する事業再編と経営権の世襲◆
サムスングループの事業再編と経営権の継承にはいつも暗い影がつきまとう。今から19年前、当時もサムスングループは複雑な循環出資の形態であった。その頂点にあってグループをコントロールしていたのが、エバーランドであった。1996年12月、李健熙会長はエバーランドの転換社債(株式に転換する権利の付いた社債)の97%を、三代目の李在鎔チーム長(当時)に不当に安い価格で売却した。エバーランドに損害を与えた李健熙会長は背任罪に問われ、08年4月に辞任した。10年3月に復活するまでに2年間のブランクを余儀なくされた。李在鎔副会長はこの時手に入れた48億3091万ウォンの転換社債を、エバーランドの株式62万7390株に変えたことで、エバーランドの25・1%の株を持つ筆頭株主になった。不法な一連の取引は、韓国社会とマスコミの激しい批判を浴びたことは言うまでもない。
サムスングループの事業再編と世襲への動きが顕著になったのは一昨年からである。その頃すでに李健熙会長は病院通いと療養を繰り返していた。李健熙会長が昨年5月に倒れ、今なお病床に伏していることが、経営権継承を加速させている。ここ2年間の動きは複雑だ。13年12月、エバーランドと第一毛織が合併し、翌年7月にエバーランドは第一毛織と社名を変更した。サムスン側の説明では、1954年に創業者・故李秉喆氏が設立した由緒ある社名が第一毛織であることから残した、とのことである。この時点で第一毛織がグループのコントロールタワーとなり、エバーランドの筆頭株主であった李在鎔副会長がそのまま第一毛織の筆頭株主に納まった。
14年12月に第一毛織が証券市場に上場され、李在鎔副会長の株式資産は801億ウォンから3兆5447億ウォンと44倍に増え、それから9カ月後の15年9月の合併で株価上昇分の1兆5684億ウォンが加わり(15年9月15日の株価基準)、李在鎔副会長の株式資産は5兆1132億ウォンにまで膨れ上がった。エバーランドの転換社債を不法に安く手に入れてからわずか19年間で、李在鎔副会長は自己資産を1058倍増やしたと報じられた。
こうした経緯を踏まえると、第一毛織とサムスン物産の合併が、事業領域が重複していたバイオ製薬事業を一本化してシナジー効果を期待する、というサムスン側の説明は説得力がなく、狙いは李在鎔副会長と李一族の私財を増やすと同時に、李在鎔副会長のサムスングループ継承への道筋をつけることにあった、とみるのが自然であろう。
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