◆互いに実力認め合い更なる韓日協力の実現を◆
――韓日貿易は3年連続で縮小しています。FTA(自由貿易協定)交渉も手つかずの状態です。韓日経済活性化のため何をすべきでしょうか。
まず日本への輸出が減ったのは今の政治的な問題がかかわっているかもしれない。なかには日本市場の閉鎖性を指摘する韓国人が多いが、非関税障壁はどこの国にも存在する。昔は欧州企業も日本市場参入には相当苦労した。それでも車は欧州車が売れているわけで、厳しい目に見えない非関税障壁の中でもマーケットシェアを伸ばすのが、企業の仕事だから文句ばかり言っている場合ではないと思うが、ただ現実にはかなり厳しい。
そして日本からの輸入が減っているのは、日本企業の現地生産が増えたことが大きい。加えて韓国の部品の国産化も進んでいる。
さらに面白いのが今、韓国人が日本へ来て何をお土産として買いたいのか。昔はお土産といえばウォークマンか象印の炊飯器か魔法瓶が多かったが、今は特段ないらしい。その代わり、日本の温泉やゴルフ、文化を楽しむコリアンが増えてきている。モノからサービスへアップグレードしている。
――具体的に韓日はどのような協力を進めれば良いのでしょうか。
今の韓日の経済関係からみて韓国が日本にかなりのところまで追い上げてきていて、今後は対等なレベルになっていくと思う。目線が同じになる。そうなると、お互い向かい合うとケンカばかりすると思う。韓国はほぼ日本と同じ産業を有しているので全方位で競争が起きる。台湾とは違う。ではどうすればいいのか。両国が力を合わせて第三国へ行くと、非常に驚異的な力を発揮できるのではないか。
二つのケースを紹介する。2002年のサッカーワールドカップ韓日共催大会は最高の大会だったという評価だ。その水面下で共催が決まるまでの招致では韓日両国のせめぎあいは物凄いものがあったと考える。どちらも「韓国だけには」、「日本だけには」と負けられなかった。そうした激しい競争心があったからこそ韓日共催で大成功を収められたのではと考える。この敵対心や競争心を利用しない手はない。
もう一つは、マレーシアのケース。クアラルンプールにはペテロナスタワーという双子ビルがある。一つは日本のハザマ、一つは韓国のサムスンが建設した。
話しを聞くと、工期短縮、コスト削減で信じられないほどの効果があったそうだ。つまり互いが競い合ったからだ。マレーシアの評価は「最高のコンビ」。こういうものは探せばいくらでもある。だから冗談で、「玄界灘に両方からトンネルを掘れば一年で工事が終わるかもしれない」と言っている。
そういう例えをすれば、韓日が一緒にできることはたくさんある。例えば小型原発や新幹線。これらは国際的な落札で韓日が競い合っているが無駄に落札できずにいるケースが目立つ。それこそタッグを組めば世界の原発や高速鉄道をみな受注できる力がある。中近東でのエンジニアリング事業もしかりだ。向かい合ってケンカばかりしているうちに世界中でお互いに損をしている。お互いに実力を認め合って一緒にやろうという姿勢でなければ中々実現できない。
――韓国経済、韓日経済発展のための提言をお願いします。
大企業に勤める一級のビジネスマンを除けば韓国のレベルはまだまだだ。大企業の人間の知的能力が100だとすれば他の分野は30程度だ。これは日本も同じかもしれない。ともかく変化をすることで社会の風通しを良くしなければならない。
韓国は創業に失敗した人に対するペナルティーが大きすぎる気がする。そして若者の失業率を問題にするが、雇用が増えないという問題もあるが、それよりは構造的な問題がより深刻だと思う。すなわち、中小企業に行きたくない人間が多い。親も中小などで働くならもう少し勉強してもいいと公務員試験を準備したりするが、人員には限りがある。結局、能力のない人は海外に行くしかないがもっと厳しい競争が待っている。
そこで私は大企業の場合、中小企業での勤務経験がなければ採用しないようなシステムを取り入れてみてはと思う。米国の大手新聞社の場合、新人を採用することはない。地方紙での経験をある程度積んだ人材だけを採用している。米国は大学教授も同様だ。
このように企業も中途採用以外は採用しない、中小企業で能力を発揮しなければ大企業に行けないような雇用体制が必要だ。加えて今は過渡期なので海外に機会を見出すしかない。留学を経験する学生も多く、韓国人の英語能力は急速に向上している。この点では日本に比べ優位だ。これをどのように活用するか。また、今のウォン高を利用して日本企業をはじめ外国の企業をM&A(合併・買収)する方向も検討に値するのではないか。