◆親ドイツ車の韓国、淡々とした反応の日本◆
輸入車市場は年間20万台前後で、ドイツ車が70%を占める。ドイツの自動車へのロイヤルティは圧倒的である。その内VWグループは、アウディとポルシェを含めて30%強のシェアでナンバーワンだ。10月の販売台数は、排ガス不正のニュースを受けて対前年比46%減だったが、VWが減った分をアウディとBMWが穴埋めした。韓国はディーゼル車の普及大国で、人気も高く、国産車を含め総登録台数の4割を占める。VWだけでなくグループ会社のアウディの排ガス不正も指摘されているので、今後の販売台数はもっとマイナスになる可能性が高い。VWやアウディのディーゼル車が販売禁止や課徴金の対象になる可能性もある。しかし、ドイツ車への信頼は安泰だ。
韓国では、これまで12万台の排ガス不正車が販売されていると指摘され、1500人超の韓国人が米国でVWに対して、代金返納と懲罰的損害賠償を請求する集団訴訟を起こすと伝わっている(中央日報)。
韓国の新聞報道で、本稿の最初にまとめた最大公約数としての世界の論調を超えるような強いVW非難は観られない。VWの今後期待される販売減を現代自や起亜が大いに穴埋めしようといった記事も見当たらない。
VWの10月の販売台数は、40数%減少したが、アウディはむしろ増加した。もちろん他のドイツ車の販売減もない。そして、韓国人による親ドイツのメンタリティにいささかの揺るぎもない。VW→ドイツ車→ドイツ国の負の連鎖は観察されていないだけでなく、親ドイツ→親ドイツ車→親VW三段階でVWへの同情といった論調も見られる。
日本の新聞は、中国・韓国と違い、VWの不正を一歩離れて伝えている。日本ではVWのディーゼル車は販売されておらず、実害もない。VWの不正がトリガーになって、今後の環境保護規制の厳格化、そしてディーゼル車規制とハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車への流れが加速するだろうと論議されている。ドイツの自動車やドイツ国への不信につながる、との論調が全くないわけではないが、聞くに及ばない的外れな議論である。私は、「VWの最大のライバルであるトヨタが、VWの失墜で漁夫の利を得るだろう」と、卑しい予測をする輩が現れないことを大変喜んでいる。
日本でも輸入車市場でVWはトップを占めていた(14年)。10月の販売台数は、VWが48%減でアウディが30%減だった(いずれも対前年同月比)。メルセデスやBMWは好調だ。VWブランドの失墜は明らかである。
3カ国でVWへの反応はお国柄を反映して同じではないが、大きな一点で共通している。つまり、VWは企業として、排ガス不正問題の全責任を、誠実に・丹念に・最後まで取り続けなければならない。VWが、金銭的費用を負担しつつ、目には見えないが確実に損傷したブランド価値を修復して世界で復活するのを待ちたい。同情はしない。責任を果たし、世界の消費者の信頼を取り戻してほしい。
つづきは本紙へ