◆海外法人の立て直しに追われるサムスン◆
李健熙会長が倒れて長期入院が続く中、今年は李在鎔副会長にとって真の成果が求められる正念場を迎えている。それは化学や防衛事業などの不採算部門や赤字企業を切り捨てることによる再生ではなく、李在鎔副会長の経営手腕が、グループの旗艦サムスン電子の実績にいつどのように反映されるかである。
2010年に李健熙会長が掲げた五大有望事業のうち、バイオ・医療機器が採算性で苦戦を強いられ、太陽電池事業は昨年撤退し、LED事業も中国製の低価格攻勢に一部撤退していることから、昨年末の組織改編においてLED事業部からLEDチームに格下げされた。昨年末新設された電装事業も、前回触れたように、世界的に出来上がっている自動車メーカーと部品メーカーの牙城に食い込めるかどうか、大いに懸念される。
最近、李在鎔副会長の実用主義がマスコミを賑わせている。実用主義の中身を洗い出してみると、サムスングループの肥大化した事業を切り捨てることに集約される。収益性の低い事業あるいは赤字の事業に大ナタを振るい、スリム化し売却を加速している。これは経営者にとって、最も手をつけやすいところから手を付けているだけではないだろうか。目前の新規事業が見当たらない現在、サムスングループが突き進んできたのは、不採算事業の売却による構造調整、韓国内事業を縮小して海外拠点の拡大、海外事業の組織改編などである。ここから浮かび上がる問題は、李在鎔副会長が実用主義に徹して突き進めたあと、見えるはずのサムスンの将来図が依然として霧の中にあることである。
実用主義と謳う第一の特徴は、不採算事業を処分し、次世代事業への資金捻出である。14年11月、ハンファグループに、サムスンテックウィン、サムスンタレス(防衛産業)、サムスン総合化学、サムスントタル(石油化学)など4社を1兆9000億ウォンで売却、15年10月にはロッテグループに、サムスン精密化学、サムスンBP化学、サムスンSDIのケミカル事業部門(別法人で分離)など、3社を3兆ウォンで売却した。
第二の特徴は、サムスン電子は9割を海外で売上げてきたが、残り1割の韓国内での販売額のウエートが小さくなり、韓国内の事業縮小が加速していることである。従来から、韓国内の市場が小さいことと国際的な価格競争に打ち勝つために、生産拠点を韓国内から海外に移転してきた。
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