ここから本文です

2016/08/26

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第30回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第30回

◆苦戦する中国ビジネス、1万人超のリストラ◆

 24年前の韓中国交正常化を契機として、韓国企業による中国進出が一気に本格化し、その年にサムスン電子も、中国広東省恵州に三星電子有限公司を設立した。これ以後、香港経由の迂回輸出から、中国がサムスン電子の現地生産・輸出拠点へと変貌していく。

 2005年には「三星中国」から「中国三星」に社名を変更して、サムスングループとして中国に骨を埋める覚悟をした。つまり「中国三星」は、中国を生産拠点、販売市場として活用するだけではなく、生産、販売から研究開発(R&D)、デザインまでの一貫経営体制を完成することで、中国企業として根をおろす究極の現地化を目指してきた。

 半導体、携帯電話、家電製品、重工業、建設、証券などあらゆる分野で中国市場に進出し、「第2のサムスン建設」というキャッチフレーズのもと、サムスン電子をグループの中心に据えたグローバル展開は、中国を軸に進められてきた。

 ところが最近では、中国経済の低迷に加えて、中国政府の国内企業育成策のもとで中国企業が躍進する一方で、外国企業に対して優遇策の廃止、許認可の遅れや締め付けなどが相次ぎ、サムスン電子は中国での立ち位置が覚束なくなっている。この7月には韓国政府が在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を決めたことから、中国内に韓国製品ボイコットの機運が出始めており、サムスングループの中国生産流通拠点に対する間接的な圧力は、予断を許さない状況を迎えている。

 16年7月4日に発表されたサムスン電子の「2016持続可能経営報告書」によれば、14年末基準で210箇所に達していた海外拠点は、昨年末基準で199箇所に減少した。縮小した海外拠点の機能は、販売支店とサービスセンター、物流法人であった。

 特に売り上げが大幅に減少した中国では、再編が火急の問題として浮上している。サムスン電子の15年事業報告書によれば、中国市場でのスマートフォンの販売不振を主因として、中国の売り上げは30兆9862億㌆に終わり、前年より2兆401億㌆(6・2%)減少、13年の40兆1512億㌆の売り上げと比較すれば、約10兆㌆の激減となった。

 サムスン電子の中国販売法人(SCIC)の売上高は、13年の25・6兆㌆から15年には11・4兆㌆に減少し、同期間の営業利益も7430億㌆の営業利益から780億㌆の赤字に転落した。


つづきは本紙へ