◆「ギャラクシーノート7」リコールの衝撃◆
サムスン電子のプレミアム製品「ギャラクシーノート7」に緊急事態が発生した。「ギャラクシーノート7」に対してリコールが起こったのだ。事の経緯は次の通りである。2016年8月2日(日本時間8月3日午前0時)、「ギャラクシーノート7」の発表イベントが、ニューヨークで華々しく開催された。同時にオリンピック開催地であるブラジル・リオデジャネイロ、ロンドンでもイベントが行われた。同月17日からは韓国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど10カ国での販売が始まり、年内1200万台を目標として順調な滑り出しであった。
販売開始から1週間後の24日、「ギャラクシーノート7」の発火事故がオンラインサイトに掲載された。当初、サムスン電子の受け止め方は、悪質なクレーマーによる悪戯と受け止めていた。以前にも携帯電話を電子レンジで加熱し、爆発に見せかけて賠償金を掠め取ろうとした輩がいたからである。ところが「ギャラクシーノート7」の爆発事故が相次いで報告されるに至って、これは悪質な消費者のクレームではないことが判明した。
9月2日午後5時、スマートフォン事業を総括している高東真・無線事業部社長が、ソウル市中区太平路のサムスン本館で緊急記者会見を行った。このとき爆発事故を率直に詫びるとともに「購入時期に関係なく『ギャラクシーノート7』を新製品に交換し、消費者がご希望なら返金に応じる方針だ」と語った。「ギャラクシーノート7」は1台当たり100万㌆弱(約9万1000円)であり、単純計算すると、250万台の全量交換は、サムスン電子にとって2兆4722億㌆(2250億円)の損害となる。「ギャラクシーノート7」の原価と流通コストはその半分程度と考えられることから、実損は1兆2361億㌆(1125億円)と推計される。この損害費用に回収コスト、お詫びの広告費、交換した「ギャラクシーノート7」の通信費一部補助などを加えると、直接の損失額は1兆5000億㌆(1365億円)と見込まれ、この分、第3四半期の営業利益が減少する。
さらに追い打ちがかけられた。9月8日に米国連邦航空局(FAA)が「ギャラクシーノート7」の航空機内での使用自制を勧告し、米国消費者製品安全委員会(CPSC)は翌日に使用中断措置を下したのである。続いてヨーロッパ航空安全庁(EASA)、日本の国土交通省、インド民間航空局(DGCA)、カナダ交通部なども「ギャラクシーノート7」の機内使用禁止を発表した。
9月15日、米国消費者製品安全委員会(CPSC)がサムスン電子の「ギャラクシーノート7」に対する公式リコールを発表したことから、単なる自発的な製品交換プログラムではなく、その使用が違法という新たな段階を迎えた。公式リコールとなると、流通している製品の全品回収措置と全品調査などが実施される。
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