◆電装事業に未来を託すサムスン◆
サムスン電子は、モノづくりという従来型のエレクトロ企業からソフト企業を目指していることから、バーチャルリアリティ(VR)、ヘルスケア、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、AR(拡張現実)など、多様な領域に投資している。
最近、特に力を入れている投資分野は、電装事業とその延長線上にあるスマートカー(IT技術を組み込んだ近未来型自動車)である。2015年12月の組織改編で電装事業チームが、権五鉉・副会長直属のDS(部品)部門の中に新設された。だが社内には電装関連の人材はほとんどおらず、昨年の3月にようやくチームが立ち上がった時、スタッフはわずか30名という陣容であった。現代やLGなどこの分野の先行企業から10年以上遅れての船出である。
昨年はイタリアの自動車メーカーのフィアット・クライスラー・グループ(FCA)の部品メーカー、Magneti Marelliを30~35億㌦での買収案件が取り沙汰されては消え、暗礁に乗り上げていた。
電装事業へのチャレンジは続き、16年1月、米MIT大学内ベンチャー会社である自律走行ソフトウエア(SW)開発会社のnuTonomyに360万㌦投資したことも、その意欲の表れであった(図表①)。2月にはサムスン電子は、エリクソン、IBM、AT&Tなどとコネクテッドカー(ICT端末としての機能を有する自動車)で協力関係を構築し、翌月、位置情報関連のソフトウエア会社であるHEREとコネクテッドカーにおけるエコシステム構築のための技術協力業務協約を締結した。
さらに16年6月にはシリコンバレーにあるサムスンリサーチアメリカ(SRA)が、コンピュータビジョン・ARラボを新設し、AIとARを通じて自律走行システムの開発研究に乗り出し、7月上海サムスン半導体有限公司が、中国の電気自動車メーカーBYD(比亜迪股份有限公司、広東省深圳市)の持分1・92%(5120億㌆)を取得、11月コネクテッドカーとオーディオの米国大手自動車部品メーカーHarmanを80億㌦で買収した。サムスン電子電装事業チームは、この領域への進出を加速している。
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