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2017/11/24

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第45回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第45回

◆事業拡大に突き進むサムスン電装事業◆

 サムスン電子が半導体への極端な依存から脱出するための切り札のひとつは、電装事業である。この11月米市場調査機関ICインサイツが発表した資料によれば、自動車用電装部品の世界市場規模は、2017年1356億㌦から21年1696億㌦に拡大し、この間市場規模が年平均5・4%のテンポで増え続けると予測している。電装事業は、自動車部品とサムスン電子が得意とするICT(情報通信技術)を融合した分野である。具体的には、自律走行車(自動で走行できる自律型ロボット)、コネクテッドカー(インターネットへの接続機能を有した自動車)、インフォテインメント(インフォメーション「情報」+エンターテインメント「娯楽」)などを領域としている。最近、この成長分野への参入企業が増えているため、電装事業も過当競争の真っただ中にある。コネクテッドカーの領域では、既存の自動車メーカーに自律走行などの最新技術を持つ協力企業が連携しており、新規参入も巻き込み激しい競争が展開されている。

 カーオーディオシステムの分野もBose Corporation(米)、パイオニア、パナソニックなどが主力企業である。カーオーディオと周辺分野のIT(情報技術)などを組み合わせた革新技術開発のテンポがきわめて速く、各社技術的な先行と差別化に苦心している。

 サムスン電子は昨年11月、過去最高額80億㌦で米ハーマンを買収したことに、半導体への過度な依存からの脱却しようという意図はハッキリ表れている。ハーマンはヘッドユニット、インフォテインメント、スピーカーなどを主要事業としている。ハーマンの株主対応が今年3月に完了し、サムスン電子は名実ともに電装部品企業の看板を掲げられることになった。ハーマン買収後、ハーマン自体の組織改編を進めているため、サムスン電子の業績への貢献度はまだ低い。当初、ハーマンの直近の業績からすれば、年間売上高約8兆㌆、営業利益7000憶㌆がサムスン電子の業績にかさ上げされると見られていたが、11月の四半期報告書によれば、17年1~9月の累積売上高6兆2477億㌆(全社の1・5%)、営業利益は41億8000万㌆の赤字となっている。ハーマンのヘッドユニット事業における17年1~9月期の市場占有率は


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