◆財閥改革に腐心するサムスングループ◆
今年2月まで李在鎔副会長が収監されていたほぼ1年間、サムスングループのコントロールタワーであった「未来戦略室」が昨年2月末に解体され、これに伴い系列会社の経営者を束ねていた「水曜社長団会議」も廃止され、グループ全体を視野に入れた最終的な意思決定機関を失ったまま現在に至っている。グループ60数社はこの1年間、グループ間や業種間の中長期戦略の調整、各社の中長期的な経営診断、大規模な新規事業投資や海外企業の買収などへの対応が疎かになったままである。
サムスン時計が止まっていたこの1年間も、文在寅大統領が掲げた財閥改革は進行している。文在寅大統領が2017年7月に発表した「国政運営20大戦略、100大課題」によれば、財閥改革について「総帥一家の専横を防止して透明で健全な経営文化を確立し、大企業集団総帥一家の支配力強化と不当な経営継承を遮断し、総帥一家による私益詐取行為と不当内部取引の根絶、金融系列会社を通した支配力強化の防止など、金融と産業の分離原則を遵守する方針」とした。
この政府方針を受けて公正取引委員会や金融当局は、サムスングループに対して循環出資の根絶と金融-産業の分離を強く求めている。まず循環出資を解消するために取り組まなければならないのは、サムスンSDIが保有するサムスン物産株の売却である。これは、財閥総帥一族が循環支配構造の頂点に位置付けられているサムスン物産の株式を30%以上保有することで、財閥全体をコントロールするとともに、経営継承権を容易にする蓄財の仕組みにもなっているためである。
ちなみにサムスン物産の主要株主は、李副会長17・23%及び一族関係者の合計ですでに30%強の31・11%、系列企業のサムスン電機とサムスンSDIなどを加えれば39・40%に達する(図表①)。17年末現在、李副会長の保有株式価値は7兆7400億㌆である。
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