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2018/08/31

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第54回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第54回

◆インド市場も守勢に追われるサムスン◆

 サムスン電子は中国市場、北米市場に次いで巨大市場を形成しているインド市場において、スマートフォンを中心に中国企業の追撃を受け早くも風雲急を告げている。

 昨年インドのスマートフォン販売台数は1億2400万台で、中国4億5000万台、北米1億9000万台には及ばないが、ガラケーを含む携帯電話全体では2億9000万台と中国に次ぐ巨大市場を形成している。

 サムスン電子がインドに注目するのは、人口13億人の要素だけでなく、LTE(ロングタームエボリューション)規格の高速通信網が普及したこととガラケーからスマートフォンへのシフトが加速しているためである。インドでは、スマートフォンの普及率がまだ43%程度で、拡大の余地が大きい。

 サムスン電子がインドでの生産準備に入ったのは1992年である。95年にノイダにインド現地法人(SIEL)を設立し、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、カラーテレビなど家電製品の生産を開始した。最近のインド現地法人「SIEL」の売上高と純利益の実績をみると(図表①)、売上高純利益率がやや低下傾向にあるものの、サムスン電子の現地法人の中では、中程度の収益性を維持している。

 サムスン電子のインド事業は順調に拡大を続けてきたが、ここ1~2年、主力の携帯電話事業が、中国企業・シャオミの追い上げを受け、トップの座を譲り渡した。

 市場調査会社IDCインドによると、2017年第4四半期以降、シャオミがスマートフォンでトップの座を奪い、今年第2四半期には前年同期比2倍以上伸びてシェア29・7%に急上昇し、サムスン電子のシェア23・9%に約6㌽の差をつけている。

 携帯電話ビジネスにおける中国企業の追い上げは、中低価格製品に留まらない。

 市場調査会社カウンターポイント・リサーチの調査によれば、中国スマートフォンメーカー・ワンプラス(本社=中国深圳、OPPO傘下の会社、13年12月設立)が、今年第2四半期(4~6月)に、インドのプレミアム(約5万円以上/台)携帯電話市場において、サムスン、アップルを抜いて初めて1位に躍り出た。


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