◆中国・華為と主導権を争うサムスン電子◆
米国と中国との貿易摩擦は、華為技術有限公司(以下華為)による5世代移動通信(以下5G)のセキュリティー問題から華為に対する制裁を強化する動きに発展し、昨年12月、華為の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)兼副会長がカナダで逮捕された。この事件は世界に衝撃を与えた。米中の先端技術を巡る覇権争いを象徴する出来事であり、中国政府を後ろ盾とした中国企業が、世界を席巻するほどの実力を付けてきた証でもある。
覇権争いの対象となっている5Gの特徴を列挙すると、そのデータ伝送速度は、2014年に始まった4G(LTE)に比べて約10倍速く、データ送受信の遅延も0・001秒に減らすことができることから、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)などに新たな体感型ビジネスなどに求められる大容量高画質の映像を瞬時に送受信することを可能とし、また自動運転、遠隔治療、工場の運営管理(スマートファクトリー)などの安全性に係わる技術的問題を解決するとみられている。
華為が米国との非常事態を迎えているこの間隙を縫って、サムスン電子が未来産業と位置付けている5Gで華為の追撃態勢を整えている。具体的には通信基地局の市場、5G対応の携帯電話(折り畳みを含む)などの領域への躍進を狙っている。
まず通信基地局についてみると、通信設備分野で華為の市場占有率は、17年基準27・9%で世界第1位となっており(図表①)、サムスン電子の3・2%と比較して9倍以上のシェアを誇る。しかも華為はすでに中国杭州と深圳、欧州のミラノとベルリンなどで5G基地局を構築し先行している。この現状を打破するために、サムスン電子は20年通信設備の市場占有率20%を目標に技術開発の強化と優秀人材の確保を目指しており、華為と激突することになる。
サムスン電子は昨年8月、AI(人工知能)、バイオ、電装部品と5Gを4大未来成長事業と位置づけ、これら4分野に対して3年間に25兆㌆を投資する計画を発表した。これらの分野の中で、特に5Gで華為と主導権を争うことになる。
サムスン電子としても、メモリー半導体や携帯電話の不振を乗り越える切り札として、5Gスマートフォンを実用化している。18年2月の平昌オリンピックで5Gのデモンストレーションを実施したのを皮切りに、今年4月から本格的な販売を開始している。LG電子を含め韓国企業は5G分野で世界をリードしようとしている。
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