◆TSMCに差を広げられたサムスン電子◆
現在、量産型のメモリー系半導体の時代から、AI(人工知能)、自律走行車、5G(第5世代移動通信)時代に突入したことにより、オーダーメード型であるシステム半導体への需要が一気に拡大している。
サムスン電子は、昨年5月には華城事業場にEUV(極端紫外線)専用ラインを基盤としたファウンドリー生産ラインを着工し、平澤2ラインでは、V―NAND、超微細ファウンドリー製品の生産計画も明らかにした。両プロジェクトは、今年下半期から本格的に稼働する見込みである。
一方のTSMC(台湾積体電路製造)は、今後3年間に1000億㌦投資すると明らかにした。最近、米国・アリゾナ州に120億㌦を投資して、5㌨㍍(10億分の1㍍)未満の超微細工程のファウンドリー生産ラインを着工し、さらに250億㌦を投資して最大5つの工場を建設する方針である。TSMCは米国だけでなく、日本の半導体研究拠点に370億円の投資、また半導体工場の建設を検討中との報道もある。
TSMCとサムスン電子の業況を比較すると、サムスン電子は、収益性の面で差を付けられている。サムスン電子は今年第1四半期に半導体部門で売り上げ19兆㌆、営業利益3兆3700億㌆、売上高営業利益率17・7%を記録したが、一方のTSMCの売り上げは約14兆5千億㌆、営業利益は約6兆㌆、売上高営業利益率は41・5%と過去最高を記録しており、利益水準ではTSMCがサムスン電子の半導体事業部の1・8倍に達している。
さらにサムスン電子の半導体事業部の中の非メモリー事業部をTSMCの売上高と比較すると、サムスン電子の非メモリー事業部の売上高は伸びているとはいえ緩やかな成長にとどまっているのに対して、TSMCの売上高は急上昇しており、格差は拡大の一途を辿っていることが分かる(図表①)。
これはサムスン電子がファウンドリー事業において、根本的なボトルネックを抱えているためである。サムスン電子のファウンドリー事業は、アップルやクアルコムを顧客としているため、最終製品でライバル関係にある。サムスン電子に委託することは、彼らの新製品情報を提供するようなものである。大手顧客は技術流出を危惧しており、サムスン電子のファウンドリー事業の発展を抑える力に作用している。TSMCやインテルはファウンドリー事業に徹しており、最終製品に手を出さない。このため、顧客と市場で競合することはない。
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