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2009/10/23

<オピニオン>対等なライバル関係へ

  • 対等なライバル関係へ

             約200人が来場した第3回日韓経済シンポ

 日韓経済協会と日韓産業技術協力財団が主催する「第3回日韓経済シンポジウム」が都内の経団連会館で開かれた。テーマは「日韓産業・地域間経済交流の更なる活性化に向けて」で、約200人が参加した。総合司会を深川由起子・早稲田大学政治経済学部教授が務め、韓国側から李亨五(イ・ヒョンオ)・淑明女子大学経営学部教授、梁聖奉(ヤン・ソンボン)・蔚山大学教授、日本側から林廣茂・同志社大学大学院ビジネス研究科教授、飯塚誠・九州工業大学特任准教授らがそれぞれ講演した。

 開会あいさつに立った飯島英胤・日韓経済協会会長(日韓産業技術協力財団理事長)は、「鳩山新政権となり日韓関係が加速化している。こうした外交面での安定化は日韓の経済、人的、文化、地域間交流など、あらゆる分野の交流の基本となる。この時期に、日韓にまたがっている課題、特に経済分野の諸課題について大いに前進し、解決することを強く期待している」と述べた。

 弊紙「林廣茂の経済・経営コラム」執筆者の林廣茂・同志社大学大学院ビジネス研究科教授は、「日韓の経済連携とグローバル競争」と題して講演。日韓は対等でライバル同士の経済関係を作りあげる必要がある。かつてのように、日本から高度の技術や経営ノウハウを移転して、遅れた韓国に役立てる関係は終了したと、日本と日本経済の最大の課題について指摘した。

 また、グローバル市場における韓日企業の競争について、デジタル家電では韓国勢が日本を大きく凌駕し、家電王国は今や韓国のことを言う。自動車では日本勢が優勢にあるが、BRICsなどの途上国市場では、日本勢を凌駕しつつあると説明し、こうした既存分野では喉を切り裂くライバル同士が、協力関係を持つことは難しく、競争を避け、多国間で協調するグリーン技術・グリーンビジネスが最も韓日協力の分野としてふさわしいと提案した。林教授は具体的に、省エネルギー、太陽光発電や水素電池、水や空気の浄化、新素材の開発、人工臓器や再生医療、食料の培養や工場栽培などの分野を挙げた。

 そして、目的を共有し、互いの強みを持ちよって役割分担しながら共同で努力する過程で日韓両国民が仲良くなり相互信頼が生まれる。日韓協調が具体化すれば、両国FTAはもちろん、アジアの経済統合も、当然のこととして実現すると主張した。

 「韓国の対日貿易拡大策・特別対策の進捗状況」と題して講演した李亨五・淑明女子大学経営学部教授はまず、対日輸出について、韓日両国は自動車、ITなど製造業を中心に産業構造が類似。このため韓国商品の日本市場拡大が困難と指摘。また、部品素材が対日赤字の多くを占める対日輸入に関しては、国内産業の技術力や供給量不足など構造的問題が根本の原因であると分析。そして、これらの解決をめざし打ち出した対日輸出有望企業の特別支援プロジェクトの打ち上げやニッチ市場への参入など、韓国政府が打ち出した特別対策の進捗状況を説明した。李教授は今後について、世界から見たとき、韓国と日本は近くて近い国であり、韓日貿易不均衡が政治的課題とならぬよう互いに務め、双方が共生の観点から貿易不均衡にアプローチすべきだと提言した。

 「日韓経済連携の新戦略と海峡経済圏形成、何から始めるべきか」と題して講演した深川教授は、世界経済構造の変化と日韓関係について、日韓両国市場はグローバル化の中で、近隣国独特のメカニズムを持ってすでに融合している。FTAがあってもなくても、実際には市場は非常に融合が進んでいると思うべきだ。特にここ10年で見ると、両国とも規制緩和され、経済はサービス化され、サービスも自由化が進んでおり、結局最後の製造業に比べて比較的国内中心だった教育、金融、物流といった分野が外に開き始めると、当然一番近くて人の行き来も自由な文化的にも近い日韓が互いに一番大きな市場になるという非常に自然なことが起きている。ここに今後、両国共、非常に急ピッチで高齢化しており医療関連のサービス、生産性向上が急務の農業、こういった分野がすでに市場の融合をリードし始めている。製造業はすでにグローバルに戦っており、世界市場から見れば日韓市場は大きなものではないが、こういった市場こそ隣であることに大きな意味があると主張した。


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