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2009/10/30

<オピニオン>韓国経済講座 第110回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員。

 日本の高齢化は、世界の先進国と比べ進行のスピードが速いと言われているが、韓国では日本よりも速いスピードで高齢化が進んでいる。急速に進む韓国の高齢化や老後保障、また主要各国との高齢化速度の比較などについて笠井信幸・アジア経済文化研究所理事に分析していただいた。

 老後生活の最大の関心は年金がどれくらい受給できるかだ。日本は「消えた年金問題」発覚以来、その後の金融危機に端を発する世界同時不況も加わり、老後の生活不安は最大関心事である。グリーンピア経営失敗に代表される年金福祉施設412物件売却による1兆円以上の損失、受給者記録漏れ、納付金横領など年金財源管理にまつわる多くの不祥事が表出している。しかし、こうした管理・運営上の問題は、国民年金の本質的問題ではない。より根本的な問題は、戦後ベビーブーマーとその二世などが高齢化し、急速に年金受給者が増加する反面、持続的な少子化によって彼らを支える独立人口(15歳~64歳)が長期的に減少する環境での財源確保と受給者対策である。

 かかる状況は日本ばかりではない。掲げた表は主要先進国と日韓中の高齢化傾向を示している。一国人口の年齢別構成の変化は、欧米先進国と東アジア諸国では異なった傾向がある。フランスをはじめとする先進国は19世紀中盤から20世紀中ごろに高齢化社会に入り、東アジアは20世紀後半から21世紀にかけて高齢化社会に入った。先進国は早くから高齢化社会に入ったにも拘らず、少子化が進まなかったため社会的高齢化が進む期間が長かった。

 例えば、フランスは65歳以上の高齢者が総人口に占める比率が7%~14%までの期間が115年、スウェーデンは85年、アメリカ73年、その他も40年以上の期間がある。しかし東アジアの日韓中は25年以下であり、韓国は17年である。高齢社会から老齢従属人口比率が21%以上の超高齢化社会までも同様な現象がみられ、東アジアでは高齢化とともに少子化が急速に進んでいることがその特徴だ。

 この傾向が最も速い速度で進行する韓国は、世界で最も早く高齢化社会を迎えたフランスの4年後に超高齢化社会に入ると予測されている。つまり、フランスが159年かかった期間を僅か27年で到達することに加えて159年かけて高齢化対策を検討できたフランスに比べ僅か27年間でその対策を実施しなければならないことを意味する。韓国の公的年金制度は、1960年に公務員年金が設立されて以来、63年の軍人年金、75年私立学校教職員年金といった特殊職域従事者に対する退職後扶助であった。しかしこの間73年に「国民福祉年金法」が制定され一般国民の退職後扶助が検討されたが実施には至らず、民主化へ向かう1986年に改めて「国民年金法」として改正、ソウルオリンピック年である1988年に実施され国民皆保険が達成された。

 2008年現在、経済活動人口の75・2%が国民年金に加入しており、加入者総数は1834万人、年金受給者は253・4万人まで増え、加入者扶養率(年金受給者数÷年金加入者数✕100)は13・8%、支給徴収比率(支給額÷徴収額×100)は31・7%である。しかし、年金財政赤字が当初から懸念され、98年の1次改正で平均所得代替率(年金給付額÷退職前所得×100)を70%から60%に引き下げ、支給開始年齢を65年歳に引き上げた。07年の第2次改正では保険料率は平均所得額の9%に維持されたものの平均所得代替率は08年で50%、その後毎年0・5%引き下げ、28年以降は40%に改定した。財源不安については様々な推計がなされており、31年枯渇説、40年説、50年説等があり財源確保は急務だ。高齢化速度が世界一速い韓国では、老齢従属人口比率が超高齢化社会に入る27年の21・8%から50年には38・2%にまで急増すると予測されており、高齢者対策はあまりにも時間がない。


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