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2009/12/28

<オピニオン>世界経済の展望と韓日両国の課題                                                    日本総合研究所 向山 英彦 上席研究員

  • 世界経済の展望と韓日両国の課題

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。

 2010年の欧米経済は0・5%程度の低い成長にとどまり、中国やインドなどアジア諸国も昨年のような勢いがない。韓国経済は昨年、輸出の好調などでG20(20カ国・地域)のなかでいち早く景気回復を果たしたが、今年は主要輸出先の先進国経済の回復の遅れが予想され、成長率予測は4%台にとどまる。李明博政権としては雇用創出格差の是正などで国民生活を改善させることが課題となろう。日本総研の向山英彦・上席主任研究員に世界経済の展望と韓日の課題を聞いた。

 ――2010年の世界経済をどう見るか。

 各国政府の景気対策や金融市場の安定化、中国はじめ新興国の安定的成長による輸出回復などに支えられて、欧米の景気が持ち直した。ただし、2010年の欧米経済は0・5%程度の低い成長にとどまるであろう。景気対策効果が弱まることのほか、自動車買い替え減税終了の反動、住宅市場の調整、不良債権の増加を背景にした金融機関の貸し渋り、雇用環境の改善の遅れなどにより、内需が伸び悩むためである。一方、アジアでは中国が景気対策の拡大で9%近い成長、インドも7%台の成長が期待されるが、過去のような勢いはない。他のアジア諸国もプラス成長に転じるものの、先進国の景気低迷により輸出が本格的な回復にいたらないので、それほど高い成長にはならない。

 ――韓国経済は昨年、ウォン安による恩恵で輸出が回復したが。

 国内総生産(GDP)の推移を見ると、2008年10~12期は前期比3・4%減となったが、2009年に入ると、1~3月期同0・1%増、4~6月期同2・6%増、7~9月期は同3・2%と加速した。第3四半期は前年同期比でも0・9%増と、G20(20カ国・地域)のなかではいち早く景気が回復した。消費の回復には、政府が減税(自動車買い替え減税を含む)や公共投資の拡大などを迅速に行ったことが奏功した。輸出の回復はウォン安効果に加えて、中国の消費刺激策に伴う対中輸出の急回復によるところが大きい。

 ――今年の韓国経済はどうか。

 対中輸出は増加するものの、中国の消費刺激策の効果が次第に減退するほか、先進国向けの輸出が伸び悩むため、昨年の反動分を除くと輸出の回復力は弱い。その影響で設備投資の伸びも抑えられる。消費の回復基調は続くが、昨年買い換え減税により押し上げられた自動車販売の反動が出るほか、所得の回復が遅れるため、民間消費の増勢は3%程度にとどまると見ている。悲観的であるが、GDP成長率は4%程度と予想している。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は大統領選で、減税と規制緩和による投資の拡大で韓国経済を活性化させ、雇用を創出すると公約した。景気対策では成果をあげたが、この点での成果は十分に出ていないため、今年の課題となろう。グリーンニューディールとサービス産業の振興で、どの程度成果を上げるかがポイントになる。4~5%の経済成長をしても、雇用の創出や格差の是正などを通じて国民生活を改善させないと、支持率が再び低下する可能性がある。

 ――韓国政府は300億㌦規模の対日赤字を改善するため、素材・部品産業の育成している。

 韓国の場合、輸出が増えると日本からの部品・素材の輸入が増え、対日貿易赤字が膨らむ傾向にある。この改善に向けて、両国政府は91年に産業技術協力財団を作り、人材育成や技術協力を続けている。また、中小企業の育成や日本企業の韓国誘致、韓国企業の対日輸出支援、日本企業による部品・素材の逆見本市の開催などの取り組みを行っているが、精密機械や高品質の素材、部品などでは日本が比較優位にあり、赤字が短期間で解消される可能性は小さい。日本の技術開発も先へと進むので、短期間で韓国が追いつくことは容易ではない。両国政府は国内の技術力向上を図りつつも、貿易・投資環境の改善を通じて民間の経済活動を側面から支援する政策を取るほうがよい。

 ――世界経済の比重が中国などアジアに移り、日韓の発言力が高まると思うが。

 日本は二酸化炭素(CO2)の削減で高い目標を設定しているが、環境・エネルギーの面で国際社会をリードしていく役割が期待される。韓国は途上国からOECD加盟国に成長した経験をもとに、先進国と新興国を結び付けるような役割を果たせると思う。高度成長や通貨危機で得た経験は、途上国の貧困解消や経済発展に参考になる内容が多い。また、中国経済の変化にいかに対応するかが今後の課題となる。人民元が上昇していけば、過去に日本や韓国で生じたように、中国企業の海外進出が加速する可能性がある。韓国政府や企業もそれに対する備えが必要だ。


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