◆戦略的な資源の安定確保を◆
近頃、筆者の事務室がある霞ヶ関では、毎日のようにデモ隊の声を耳にする。中国との外交的な力比べで無能な姿をみせたという菅内閣に対する声だ。
9月7日に日本海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突した事件で、日本政府は中国漁船の船長を拘束した際、領土問題に対して強硬で明白な姿勢を示した。
だが、中国がガス田開発の交渉延期、企業職員1万人の日本旅行計画取消、閣僚級以上の交流中断、レアアースの輸出禁止、日本人4名の調査など強力な報復措置をとると、日本は9月24日に船長釈放を発表してからも中国の顔色を窺わなければならなかった。日本が中国の「力の外交」に屈服した形となったのである。
中国が経済的成長を基盤にし、東アジアでの覇権を追求及び世界最高の影響力をもつ指導国になろうとすることが、今回の事態を通じて一層明確になっている。
2008年の世界経済危機以降、世界経済が中国の高成長に依存してきたことや今後も中国の成長の持続性に支えられる点は明らかだ。輸出主導型の経済構造をもつ韓国と日本にとって、中国は最大の輸出国であると同時に最大の輸入国だ。世界市場では、最大の競争者に浮上している。したがって、中国の経済成長と政治的覇権強化が韓国と日本の産業全般に及ぼす影響は、他の国々とは切迫性が違う。
電子、自動車、軍需製品の生産で必須となるレアアースという金属がある。今回の中日外交紛争でレアアースの名を初めて聞いた人々もいるだろう。レアアースは様々な分野で使用され、「産業のビタミン」とも呼ばれる。さらに小さく、軽く、強力な永久磁石を作るうえで必須素材となるため、大部分の先端製品に多く活用されている。電気自動車、二次電池、風力発電機のような親環境産業はもちろん、航空機エンジン用発電機、ミサイル誘導システムなどの軍需産業でも必要な資源だ。世界最高の先端産業を営む日本がレアアースを調達できない場合、どうなるかは歴然だ。 日本は天然資源に乏しく、資源の輸入依存率が90%を超える。資源の円滑な需給が成り立たなければ、産業は行き詰まる。
今回の中国のレアアース対日輸出禁止措置は結果的に強力な圧迫となり、日本は無力であるほかなかった。資源を武器として使用する場合、当該資源の依存度が高い国家にとっては、致命的な脅威となるということだ。
中国は全世界のレアアース埋蔵量の30%を保有し、実際の供給量では延べ97%を独占している。鄧小平は「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と話したという。これは1992年に述べられたが、中国政府は86年から国家の高技術研究発展項目計画にレアアースの資源開発関連項目を含めて莫大な資金と優秀な人材を投じていた。90年代に中国産レアアースの本格的輸出に伴い、レアアース価格が急落。それまで市場を主導していた米国など西洋企業は次々と廃業し、中国のレアアース独占時代が始まった。レアアースは他の鉱物と違い、採掘及び抽出過程が独特で難しい。そのため中国が確保した独占的競争優位を短時間でひっくり返すことは困難で、米国も10年の格差があると認めている。
10月8日、中国・EU首脳会議で温家宝・中国首相はレアアースを輸入国に対する交渉手段として利用しないと公式に言及しながらも、日本との領土紛争で資源武器として利用したとの指摘を真っ向から否認した。しかし、中国はレアアースの輸出を禁止しないものの、適切な統制と規制は必要だという。民間主導から政府主導に切り替えて採掘と輸出を管理するということだが、結局は独占的地位をより効果的に利用するという意味だろう。中国は中東、アフリカ、中央アジアなどで各種資源の確保に熱を上げている。自国内の経済成長によって莫大な資源の需要が出ているためではあるが、中国に資源が集まれば対外的影響力は拡大するだろう。
中国の対外影響力の拡大は米国の影響力縮小及び安保で大きな威嚇になると判断した米国政府が、米国内でレアアースの生産拡大方案を模索するなど中国の資源武器化に対応する戦略を構想しているとの記事も出ている。
資源確保に関連して、韓国では喜ばしいニュースが一つある。9月24日に韓国石油開発公社が英国の油田開発会社ダナ・ペトロリアムを買収した。北海とアフリカ地域に数十個の探査開発及び生産拠点をもつダナの買収により、韓国は国内で消費される原油の10%以上を韓国所有の油田で充当できるようになった。資源の安定的確保のためには海外企業の敵対的M&Aも可能、というビジネスモデルも証明した。
だが、韓国も日本のように中国との資源調達関係で強い圧迫を受け、中国との産業的競争と経済的紛争で損害を被ることがあるかも知れない。
すでに中国は北朝鮮に対する経済的・政治的支援国としての立場を固め、中国の東北3省の開発戦略である東北振興計画と北朝鮮の羅津-先鋒及び新義州経済特区開発計画を連係させる動きもみせている。北朝鮮の鉱物資源開発が中国企業中心に進行されることは、韓国経済に不利との指摘も出ている。韓国政府が資源安保戦略をもっているのか知りたい。