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2010/11/12

<オピニオン>ハリー金の韓国産業ウォッチ⑩新韓流のメイド・イン・コリア                                                 ディスプレイバンク日本事務所 金 桂煥 代表

  • ディスプレイバンク日本事務所 金 桂煥 代表

    キム・ゲファン(英語名ハリー・キム) 1967年ソウル生まれ。94年漢陽大学卒業後、マーケティング系企業に入社。2004年来日し、エレクトロニクス産業のアナリストとして活動。09年からディスプレイバンク日本事務所代表。

◆独創性をバランス良く融合◆

 いま日本ではKARAや少女時代など韓国のガールズグループ旋風が吹き、アルバムがオリコンチャート上位にランクインしている。日本の大衆音楽専門家の間ではビートルズの米国進出を意味する「英国の侵攻」に例え、韓国のガールズグループ進出を「韓国の侵攻」と表現することさえある。

 日本における韓国ガールズグループの成功は、かわいさだけを強調する日本のガールズグループと違い、パワーのある精巧なダンスや歌唱力など実力を兼ね備えたためだという。日本では珍しいコンセプト「メイド・イン・コリア」で、日本の10代・20代女性に高い人気を得ている。

 少女時代は先月26日のオリコンデイリーチャート1位を占め、グループのメンバーであるスヨンはインタービューで「音楽のスタイルを日本に合わせて変えようとせず、韓国のスタイルや韓国で愛された要因をそのまま持っていったことが短期間で成功できた理由だと思う」と話した。

 これまで日本における韓流はドラマや二枚目俳優を中心とし、40代・50代女性からの人気がベースとなった。これに対し、現在の韓国ガールズグループ旋風は全く新しい韓流とのと見方が多い。2004年に韓流が日本社会にセンセーションを起こした真っ盛り、韓流は新しい日流(日本流)に過ぎないと話した日本の映画監督を思い出す。様々な素材を持つ日本の漫画と小説、繊細で深みにおるJポップの影響下で育ったのが韓国ドラマであるとし、韓流は日流の一脈であるため日本で受け入れられているという評価だ。この指摘に対しては、当時に日本だけでなく中国や台湾などアジア全域で韓流旋風を起こしたという点で反論の余地は大いにある。しかしながら、日本の漫画と音楽がアジアで底力と影響力を持つのは、明らかな事実だ。韓国の大衆文化の生産方式が日本を模倣しながら成長したという憶測に対しても、反論は容易でない。

 日本での韓国ガールズグループ旋風を新しい韓流と見る理由は、模倣でなくオリジナリティーによって新しい流れを作っているためだ。それは新鮮かつ刺激的で、新しい満足と期待を提供する。韓国の大衆文化産業の力量が成長したことを感じ取れる。

 このような韓国文化産業の成長は、結局のところ日本と肩を並べた韓国技術企業の成長と非常に似ている。韓国企業は半導体、ディスプレー、自動車、造船、化学、精密機械など様々な分野で日本との技術格差を縮めてきた。初めは日本の開発技術に倣い、開発に成功すれば量産技術を倣った。そして、どんな材料を使用し、どんな装備を投じるかを綿密に分析したのち、韓国の状況に合わせて少しずつ変えてきた。その結果、多くの分野で韓国の独創的な開発技術と量産技術が確立し、生産に適用されている。

 メモリー半導体とディスプレーに関しては、もはや日本は韓国の競争相手でない。両国の半導体産業とディスプレー産業の成長曲線をみると、日本は上から下へ、韓国は下から上へ曲線を描いている。これは、韓国が日本に代わったことを意味する。日本の技術だけでなく事業戦略までもベンチマーキングしながら事業を開始し、そこに躍動的な韓国的経営方式を加味しながら持続的に成長してきた結果といえる。

 現在、日本の得意分野である二次電池、太陽電池、LED(発光ダイオード)のような次世代産業でも、そのような結果が出始めている。最近、これらの産業に関係するサムスンとLGの系列社が莫大な投資を続けているのは、日本をはじめとする先行国家の技術と事業モデルに対する分析を終了、基盤技術の開発も完成したものと解釈できる。二次電池分野では、すでに世界シェアで日本企業に近付いた。新しい市場である電気自動車とIT(情報技術)機器のためのバッテリー市場で、韓国産の威力は高まっている。

 一方、LEDテレビの光源となるLEDの需要拡大を契機にし、LEDの生産投資に乗り出した韓国企業はサムスンとLGだけでない。LED産業は、照明市場という夢の舞台に立つことで大いに期待されている。韓国のLED関連技術はまだ独創性の段階でなく、ベンチマーキングの段階かも知れない。しかし、技術開発と量産の投資は続いている。

 ある日本のLED産業専門家は、2015年以降に本格化する全世界LED照明市場の絶対強者は欧米企業になる可能性が高いが、韓国企業(おそらくサムスン)が第一人者になる可能性はより高いと述べた。日本のLED産業が抱えている課題は、非常に優れた保有技術に関係なく複雑で難しいようだ。半面、韓国の技術的水準はまだ分からないが、事業展開の躍動性と力量については容易に計れるという意味であろう。

 日本の電子産業が韓国の電子産業の成長に大きな影響を与えた事実は、否めない。いまでも部品、素材分野の依存度は広く深い。過去も現在も、韓国企業は日本の技術企業の成功と失敗を綿密に分析している。その結果、日本企業とは違う技術性と事業性をバランスよく合わせることに努め、独創性を中心にして競争力を再編している。まるで韓国ガールズグループが独創的で躍動的なダンスと歌唱力を備え、日本の若い女性から人気を得ているように…。


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