◆韓国経済安定の土台構築を◆
世界経済への不安が再び高まっている。ギリシャの債務不履行(デフォルト)に対する憂慮から、金融市場は急変。韓国の株価は暴落し、為替はウォン安となった。
米国政府の債務上限引き上げ及びこれに伴う米国の信用格付け引き下げを契機にし、大きく揺らぎ始めた。
このようなウォン安のために政府が介入するかも知れないという警戒心から、5日の対ドル為替は1㌦=約1190ウォンで落ち着きをみせた。韓国の主要金融機関は今後の為替レートを1㌦=1100~1150ウォンと予想している。
韓国内では、1997年の通貨危機または2008年のリーマンショックのような金融危機が来るという「10月危機説」が広がっている。
だが、外貨保有高が十分であること(9月末現在、約3034億㌦)に加え、短期外債比率が過去に比べて遥かに低い(全体外債のうち37・6%、6月基準)ことから、政府は「過去のような金融危機はない」との立場だ。
グローバル信用評価会社も現在の韓国経済について堅実かつ流動性も豊富と評価しており、10月危機説は説得力を持たないのかも知れない。
一方、韓国の産業がむしろ過去の金融危機を通じて成長したとの意見もある。
現在(08年後わずか3年ぶりの危機)も、もう一度成長の踏み台になり得るという主張だ。ウォン・ドル為替レートが100ウォン上昇すれば、追加の営業利益が4・3兆ウォン発生すると提示した証券会社もある。
輸出中心の韓国企業としては、100ウォンのウォン安時に追加の営業利益が5%発生する。実際に、08年のウォン安によって該当企業は莫大な為替差益を収めた。
08年下半期以降サムスンとLGのディスプレー事業に対する大規模投資が成り立ったのも、豊富な現金があったからだ。
ウォン安に期待することは、漠然と不安に思うよりは良い。ウォン安になった分だけ、韓国製品の価格競争力は高まる。
だが今年は、韓国の代表的企業が世界景気の低迷に伴って実績不振の壁にぶつかっている。
半導体とディスプレー価格は原価を遥かに下回り、回復の兆しが全くみられない。3年前から繰り返してきた増産投資は、過剰投資という批判に直面。サムスン電子とLG電子は全組織を整備し、不況克服に総力を挙げている。
韓国車の米国内シェアに関しては、東日本大震災の衝撃から抜け出した日本との熾烈な競争が待っている。
80年代から韓国の主要外貨獲得事業となっていた中東地域建設プロジェクトは、欧州財政危機による原油価格の下落及び中東の景気低迷でプロジェクト取消し、または工事費用を受け取れないかも知れないという不安がある。
このため、韓国株式市場において建設関連の株式は今月4~5日の2日間に11~25%の暴落をみせた。
そのような渦中で、為替レートはウォン安になっている。輸出中心の産業構造を持つ韓国にとって価格は重要な競争力となり、当面のウォン安は08年のように豊富な現金をもたらす。
その資金を研究開発や生産拡大に投資すれば、再び成長できるだろう。
08年以降に円高が定着した日本企業は急速に競争力を失い、それだけ韓国企業は市場を占めていった。
このように確保した現金を研究開発に投資し、品質競争力も向上。韓国産の部品が日本の自動車及び電子産業に占める比率も高まっている。為替の変化は、両国間の貿易構造も変えているのである。
しかし、この変化は実際のところ為替と無関係な大きな流れを背景にしている点を見過ごしてはならないだろう。
10年前の東アジア産業構造は、日本の部品・素材技術、韓国と台湾の量産技術、中国の低賃金を役割分担としていた。だが現在、賃金と消費力が同時に上昇している中国を中心にし、急激に再編されている。
韓国と台湾は量産技術で付加価値を得られなくなり、部品・素材技術に対して大規模投資を行っている。
日本は、新たな付加価値分野を見つけなければならなくなった。
リーマンショック以降、日本企業は構造調整を続けてきた。いまは円高時代のビジネスモデルを見つけたであろう。今年に入って海外直接投資が拡大しているのは、過去3年間の長考の末に選択した日本企業の賭けといえる。
海外で優秀な技術とビジネスモデルを持つ会社を円高のために安く買い、日本の技術とつなげて大きなシナジーを出すことができる。このような過程で日本産業のグローバル化は一層拡大し、強化されるだろう。
ウォン安によって輸出競争力が上がり、現金流動性が豊富になるというのは、断片的な事に過ぎない。
総体的に現在の金融危機または変動性を把握し、長期的な韓国産業の成長を図り、韓国経済の安定的土台を構築しようという提案は、韓国内では少数意見なのだろうか。