◆高まる国際ポジション◆
輸出が国民経済を引っ張っている。韓国の2010年の輸出総額は、関税庁によれば4664億ドルに達し、これに輸入4252億ドルを加えると1兆ドル輸出国時代はもう目前だ。
交易活動と国民経済の関係を表す指標に貿易依存度がある。貿易依存度とは一国の経済が貿易に依存する度合いや国内経済活動と海外市場との結び付きの程度を示す1つの指標で、国民総生産または国民所得に対する貿易額または輸出額や輸入額の比率で表す。
一国の国民経済は、その国の国土や人口の規模・構造、資源の賦存状況、国民所得の水準、経済発展や技術進歩の程度、産業構造、貿易・産業政策のあり方などに依存する。
例えば、国内経済規模の大きい国は、市場、生産力、資源などの自給度が高いため、米国(18・7%、09年)や日本(22・3%、同)のように貿易依存度は低い傾向にある。
逆に、市場規模が小さい国の場合、国内で全ての産業を成立させることは難しく、海外市場への輸出もしくは資源、産業投入財などを国外供給地からの輸入に頼らざるを得ないことから貿易依存度は高くなるのが一般的である。
韓国の貿易依存度(輸出入額÷国民所得✕100)を見ると、1990年の51・1%から94年には46・9%まで落ちたが、98年にIMF危機の影響で所得が減少し65・2%まで上昇した。その後02年の54・6%から07年の69・4%までは50~60%台を維持した。
しかし08年にはリーマン・ショックによる国民所得の減少と貿易拡大(輸出13・6%増、輸入22・0%増)で92・3%まで急騰し、09年はリーマン・ショックによる影響が貿易に出て82・4%に低下したが、10年には85%台(輸出依存度45%、輸入依存度40%)との発表が企画財政部からなされた。
韓国の貿易依存度が高いのは国内市場が狭いからだ、とよく言われている。しかしそれはごく一部の見解であり、一人当たり国民所得が1万8000㌦を超えることを考慮すれば貿易依存度の説明理由として説得性は低いであろう。むしろ韓国の経済政策にその理由が求められよう。
韓国が海外市場に目を向けたのは、第1次5カ年計画の開始時であった。62年に開始された第1次計画は64年には早くも外貨不足に陥り、輸入投入財獲得が困難となった。
そこで、外貨獲得のため、それまで計画になかった輸出産業育成を突然打ち出したのが海外市場と国民経済を結び付けた最初の契機である。当時の輸出品はかつら等の雑貨と衣類であった。
しかし、70年代に入ると重化学工業化の展開により輸出構造が高度化するとともに工業投入財輸入も増大し輸入誘発型輸出パターンが次第に定着していった。
経済発展を輸出促進と結合した輸出志向工業化が本格的に展開し始めたのはこの時期である。以来貿易依存度の上昇理由に、外貨獲得に輸出入市場確保要因が加わった。
80年代には三低景気により輸出が急増し、韓国はこの頃になると世界市場において限界輸出国から主要輸出国へと国際ポジションを高めた。90年代には半導体に代表される技術集約財の輸出が増大したがIMF危機によってこれまでの創業者主導の財閥構造が崩壊し、新たな専門経営による企業構造へと転換した。その結果、輸出品目構成も移動通信機器、液晶パネル、集積回路デバイス、ノートブックPC、等の高技術輸出品が増加し、輸出と国内経済が連結した。
掲げた図は海外市場構造を整理したものであるが、10年の輸出相手国は230カ国に及んでいる。近年の輸出好調の背景として、新興市場への積極的なアプローチとしてアフリカ、中近東市場拡大が挙げられるが、それらは未だ市場参入初期段階であって、主力市場は中米、アジア諸国である。
また、輸出規模で見ると1000億㌦台市場が8カ国で58%を占めており依然として集中型市場構造となっている。
今後の取り組みとしては、内需の一層の拡大による海外インパクト吸収力を強化すること、海外市場多角化などへの対応が肝要である。