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2011/02/04

<オピニオン>新エネルギー車のパラダイムシフト                                                                 サムスンSDI 佐藤 登 常務

  • サムスンSDI 佐藤 登 常務

    さとう・のぼる 1953年秋田県生まれ。78年横浜国立大学大学院修士課程修了後、本田技研工業入社。88年東京大学工学博士。97年名古屋大学非常勤講師兼任。99年から4年連続「世界人名事典」に掲載。本田技術研究所チーフエンジニアを経て04年9月よりサムスンSDI常務就任。05年度東京農工大学客員教授併任。08年度より秋田県学術顧問併任。著者HP:http://members.jcom.home.ne.jp/drsato/(第1回から67回までの記事掲載中)

◆規模よりも適合してこそ存続◆

 1月下旬、米国カリフォルニア州パサデナで、ハイブリッド車や電気自動車、ならびにその用途としての自動車用電池、さらには素材関連に関する国際会議が開催された。自動車メーカー、電池メーカー、素材メーカー、装置メーカーが一堂に会し、大規模な展示とともにシンポジウムが運営されるシステムをとっている。

 この国際会議は2001年に第1回が開催され、今回で11回目の会議となったが、2009年までは毎年1回開催されていた。そして昨年からは欧州を更なる拠点としてドイツでの開催も始まり、都合年2回のイベントとなっている。

 今回の参加者は約900名であったが、ドイツでの参加者を合算すると年々増加の一途を辿っている。トヨタ、ホンダを中心とした近年のハイブリッド車の市場浸透に加え、家庭でも充電が可能で短距離ながら電気自動車としても走行可能なプラグイン・ハイブリッド車の市場実験も始まり、さらには電気自動車も三菱や日産によって市場に投入されるなど、急速に電動車両化の波が押し寄せている。

 このような市場実績から、今回の会議では、かなり現実性を見通すことが可能となった段階となっていることから、多くの白熱した議論が交わされた。

 何と言っても、これらの電動車両の鍵となる技術は電池であり、「電池を制するものは電動車両を制す」と言う状況を創り出している。そして電池を大きく支え、革新的に飛躍させるものが素材技術であり、そのために電池事業を考慮した素材メーカーの新戦略はもとより、新規素材メーカーの出現も顕著になっている。

 日本と韓国、欧米の自動車メーカーは個々の戦略により電動車両を開発し供給しているが、この分野では日本の存在感がひときわ高い。電池技術も日本に一日の長があり、実績を積み上げている。

 しかし一方の小型民生用リチウムイオン電池では、これまで販売数量シェアが世界トップを誇っていた三洋電機が、昨年には首位の座をサムスンSDIに明け渡すなど、変化が生じている。その分、日本の素材メーカーの関心も日本のみならず、韓国の電池メーカーにかなり熱い視線を寄せており、積極的なアライアンス造りに奔走している。

 どのタイプの素材が電池の主流になるか、あるいは多く使われるかの動きが、最近では素材メーカーの株価にも大きく影響を及ぼしている。投資家もこのような動きにかなり過敏になってきた。

 今回の国際会議では業界の業績が反映される形で、GMは業績の急回復のもとで参加者も23名と驚異の数を記録した。過去は2ないし3名程度の出席だったからである。

 韓国は例年通り、LG化学と21名の出席者を数えたSKイノベーションが積極的で、展示やプレゼンでも存在感をアピールしていた。自動車分野での電池の事業化にはLGが多くの自動車メーカーと契約をとっているなど話題性もあり、今後の進展に注目が集まっている。したがって、日本の電池メーカーも小型民生リチウムイオン電池と同様に、韓国勢の勢いに脅威を感じている。

 これら一連の電動車両は俄かに増大していくことになるが、15年を境に急速な勢いで普及していく予測である。もっともその段階でも、電気自動車よりはプラグイン、それよりもハイブリッド車という構図であるが、この流れにうまく乗れない自動車メーカーは淘汰されるリスクがある。

 しかしこのような新型システムの車開発には巨額な開発費用が必要となることから、体力に応じた戦略が必要で、規模の小さめな自動車メーカーは技術ライセンスの取得や協業といったビジネスモデルも考慮する必要があるだろう。

 全世界を取り巻く大きなうねりが新たな提携関係や協業関係といった形で育まれ、いろいろなビジネスモデルが考えられるようになっており、従来の自動車産業とその関連事業に対して進化が起こっている。

 19世紀のダーウィンの進化論にあるように、規模の大小ではなく環境に適合するものが存続するシナリオが目の前に迫ってきた。


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