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2011/10/07

<オピニオン>高齢化社会と医療サービス                                                                 サムスンSDI 佐藤 登 常務

  • サムスンSDI 佐藤 登 常務

    さとう・のぼる 1953年秋田県生まれ。78年横浜国立大学大学院修士課程修了後、本田技研工業入社。88年東京大学工学博士。97年名古屋大学非常勤講師兼任。99年から4年連続「世界人名事典」に掲載。本田技術研究所チーフエンジニアを経て04年9月よりサムスンSDI常務就任。05年度東京農工大学客員教授併任。10年度より秋田県教育視学監併任。11年度名古屋大学客員教授併任。著者HP:http://members.jcom.home.ne.jp/drsato/(第1回から75回までの記事掲載中)

  • 高齢化社会と医療サービス

    ソウルのSMC

◆医学の日韓交流にも期待◆

 世界銀行統計によれば、65歳以上の高齢者が占める人口比率は日本が世界のトップにあり、2006年の20・41%から09年には21・95%にまで拡大した。韓国の06年では9・67%(58位)、09年では10・68%(53位)と日本の半分ではあるが、同様に徐々に拡大しつつある。

 一方、平均寿命の比較では、女性では日本が06年の85・81歳から09年の86・44歳(3年間で0・63歳向上)とトップであり、男性では06年の79・0歳(5位)から09年の79・59歳(7位、3年間で0・59歳向上)と推移している。同様に韓国では、女性が06年の82・36歳(21位)から09年の83・69歳(12位、3年間で1・33歳向上)、男性では06年の75・74歳(37位)から09年の77・02歳(28位、3年間で1・28歳向上)と推移しており、日韓の差は縮まってきていて双方とも世界的に上位にある。平均寿命が増大している分、高齢化も進んでいることになる。

 このように平均寿命が高い背景を裏付ける理由としては、肥満率の低さ、高度な医療サービス、保険システムなどが両国に共通するところである。OECD諸国における肥満率の比較を見ると、06年統計では日本の3・4%が最も低く、韓国が3・5%と次いでほぼ同等にあり、逆に米国は34%とワーストを記録している。圧倒的に食生活に依存した結果である。

 米国では医療費のみならず、医療保険も高いため保険に加入できていない人達が健康を犠牲にしていることで社会問題にもなっているが、日韓の医療保険は浸透していて健康管理が進んでいるという実態がある。但し、医療保険の慢性的な赤字体制は続いており、今後の保険料見直しへの影響もあり得る。

 日本人の器用さは世界でも有名であるが、心臓カテーテル治療などの器用さが要求される分野では日本の実績が世界的に高く評価されている。内視鏡診断や腹空孔手術などの領域では、ハードの高機能先端技術開発と専門医の技術・知見がうまく融合して、これも世界的に高い実績を誇っている。

 ソウルの江南には1994年9月に開院されたアジア最大規模を誇るサムスン・メディカルセンター(SMC)がある。08年1月に癌センターが併設され、09年11月には外国人専用病棟も開設された。現在、メディカル・ドクターは約1300名、看護師が約2500名、それに職員を含めると総勢約7400名が日々の医療業務に携わっている。1日あたりの平均患者数は8000名に上る規模であるが、それでも誰もがここで医療サービスや健康診断を受けられるわけではない。

 04年から5年間、韓国に居住していた時には、このSMCで定期的な人間ドックを受けていたが、最新の医療機器をはじめ充実した高度な医療サービス、米国留学経験を持つ数多くのドクター、木目細かなケアなどは注目に値する。西洋医学では日本が導入したドイツ医学ともう一方の米国医学が根底にあるが、SMCは専門医制度をとっている米国医学をモデルとして取り扱っている。

 95年1月17日に発生した阪神・淡路大震災にはSMCから医師看護師団を派遣し、国を超えた医療貢献を行った。本年3月11日の東日本大震災でも同様に、医師看護師団の派遣が即時に決定された。しかし日本政府の受け入れ態勢が十分ではなく、この提案が断られたために実行には移されなかったが、このように国境を越える社会貢献も積極的に進めている。

 この9月末には、母校である秋田県立横手高等学校の修学旅行が希望者35名を対象に校長・教員同行のもとソウルへ飛び立った。同校の五十嵐校長の熱い願いもあって、サムスングループ内での何か先進的かつ印象的なイベントをお願いされていたが、このSMCは日本には無い規模と機能があることから、今回は特別にお願いをして、高校生が直接見学・質疑ができる機会を創った。日本の医師団を研修等で受け入れるシステムはあるが、高校生はもちろん、医学部の学生でも見学を受け入れる仕組みはないということだったので、如何に特別に配慮してくれたのかが理解できる。

 修学旅行生の中には医学部志望も多く、SMCからの説明に対しても積極的に質問する生徒の姿は印象的で、興味深い研修となった模様である。このような若い世代の日韓交流が、グローバル社会の中で一層進んでいくことを期待している。


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