◆世界的な合従連衡が活発化◆
東京モーターショーが開幕した。今回のモーターショーのキーワードのひとつに環境自動車が挙げられている。と言っても、何も電気駆動系を有した自動車のみではなく、従来のガソリン自動車も含めての話である。
ガソリン内燃機関の効率向上による燃費性能の改善、欧州市場におけるクリーンディーゼル車の浸透、そして電動車両としてのハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、さらには燃料電池自動車(FCV)まで含めると多様な環境自動車が出揃う。
クリーンディーゼル車は欧州勢が強く、ダイムラーとトヨタとの技術提携が見られる一方、電動車両系に関しては圧倒的に日本勢が強みを発揮している。
中でもEVに関しては1998年の米国カリフォルニア州で課せられた販売義務の法規発効により、トヨタ、ホンダ、日産は米国の自動車メーカーに先駆けてCA州に供給した実績があり、現在のEV技術の根幹を形成してきた。
トヨタとホンダがEVを12年に市場へ供給する方針は、この分野で先行している日産や三菱自動車と異なる戦略を有しているためである。
HEVでは97年のトヨタ・プリウスに始まりホンダが99年にインサイトを発売し話題となって久しいが、HEVの流れは今後も勢いを増す一方である。
米国のフォード社もHEVは販売しているもののトヨタからの技術ライセンスを得ての話であって、基幹部品はことごとく日本製という構図であり、日本の先進性が立証されている。
PHEVは12年初頭にトヨタから販売されることになっているが、その後に各社もPHEVの実用化を目指した展開を図っている。
家庭で充電できるPHEVに対する市場での反応は見てみないといけないが、EVよりは格段に使いやすい車であることから将来性はある。課題は、電池が大きくなる分のコスト増で、ここは電池メーカーの努力代が問われることになる。
FCVは10年ほど前に究極の環境車として話題を集めたが、今はHEVやPHEV、EVへの関心の高まりもあって、ひと頃の話題性は無い。航続距離はガソリン車並になっている反面、部材コストの低減は最大課題のひとつで信頼性・安全性とともに十分な熟成が必要だ。
もっとも水素を使うFCVはクリーンであるものの、水素製造段階では天然ガスからの改質プロセスで二酸化炭素を排出するため、ライフサイクルアセスメント(LCA)としては言い訳が付きまとう燃料システムになっている。それでも日本勢やダイムラーは15年に市場への供給を表明しており、積極的な環境への取り組み姿勢を強調している。
韓国の現代自動車は日本が為替問題やタイの洪水問題に直面して業績を悪化させている中で、着実に販売台数を伸ばし、トヨタをも追い越そうという勢いがある。そこに環境自動車の機能が加われば更に発展する可能性が高く、さまざまな攻防が展開されるものと考える。
このような環境自動車に対して、コンサルタント企業や調査会社などが2030年あたりまでの展望を予測しているが、企業によって分析の仕方が大きく異なるので、台数の絶対値の議論に関しては大きな差が現れている。
どのように分析するかであって、更に楽観的に見るか保守的に見るかの要素も加わり大きな差をもたらすことになるが、今後の電動車両系の拡大傾向を否定するものではない。
そうなってくるとこれまでの部材メーカーのビジネスモデルも大きく変わることになり、新たなビジネスの機会と取る企業があれば、逆に従来型のビジネスモデルに危機感をもつ企業もあるので、サプライチェーンを含めたパラダイムシフトが起こってくる。
日本の自動車メーカーでも電動車両系の中国生産を表明しているので、そこに供給する部材は中国国内からの供給というニーズも生まれてくる。いずれにしろ、ニーズに呼応できる部材メーカーが強みを持つようになることは必至で、生産拠点、開発拠点、供給拠点創りが戦略上必要だ。サムスンの強みは既存の拠点が随所にあることで、柔軟なビジネスモデルを描けることを特徴としている。
環境自動車という新たな切り口からは企業提携も一層進むと思われるが、環境改善と豊かな社会システムへの貢献につなげる手法として、世界的な合従連衡や提携などが活発になるものと予測される。