◆韓国経済が直面する実状示す◆
2008年に始まった金融産業の世界的混乱は、5年が過ぎた今でも続いている。最近ヨーロッパで高まっている財政危機は、ギリシャだけの問題ではなく、スペインやフランスにまでその影響が拡大すると見込まれている。
米国の経済環境も依然として改善されないでいる。このように米国やヨーロッパなど先進国での景気低迷が続くなか、先進国に対する輸出を成長の軸にしてきた新興国にも深刻な影響を与えている。
新興国という新しい市場が期待以下の成長を見せているという点で先進国中心から離脱しようとする輸出主導型企業の戦略にも支障が生じている。これはまた再び先進国内需の萎縮につながっている。こうした悪循環が一度始まってしまうと、そこから抜け出すのは容易でないようだ。ヨーロッパではEU(欧州連合)の解体論も出てくるなど政治的混乱も生じている。
この悪循環の出発点となったのは周知の通り米国の住宅市場に対する不信感から始まった。不動産市場のバブルを量産してきた金融システムが、ある日突然不動産という資産を信頼できないと判断した瞬間から現在の世界的金融恐慌は始まった。
先週の韓国出張の際、筆者は韓国のある中堅建設企業が倒産したというニュースを見て驚いた。数十年にわたって堅実に成長してきたと記憶している企業だっただけに、なぜ突然倒産に至ったのか経緯が気になった。
さっそく韓国の建設産業動向を調べてみると、韓国の100大建設企業の中で35社が経営不振や倒産の危機に瀕していた。
半導体やディスプレーを専門とする著者としては、その詳しい内幕までは分からないが、最近の韓国経済が内需萎縮で深刻な困難に陥っているという状況と密接な関連があるだろう。
韓国経済が最近数年間で成し遂げた成長は、輸出中心企業の成果だ。例えば史上最大の貿易黒字を達成したとか、自動車と電子製品の世界市場占有率が高まったとかという輸出分野の成果とは異なるように、内需景気は萎縮を続けてきた。
特に韓国の住宅市場は5年間続けて沈滞している。結局のところ、この長期間の不況が建設産業への直撃弾となったのである。住宅分野の沈滞を補完してきた公共分野の工事も10年以来、規模の縮小が続いている。
韓国では建設産業従事者が多く、韓国建設産業の沈没は韓国経済に莫大な打撃を与えるということを意味する。
国内総生産(GDP)における住宅部門および公共工事に対する建設投資が占める割合は07年の17・2%から昨年は13・5%に大幅減少した。このように建設景気が長期間低迷すれば多くの人が雇用を失うことになり、家計所得が減少して内需市場の萎縮につながると懸念の声が多い。
韓国の建設産業が1970年代から80年代の中東地域での建設ブームを通じて莫大な外貨を得た輸出の担い手であり、今日まで中東地域で確固たる建設強国のイメージを作ってきたという点は否定できない事実だ。
しかし、国内市場での建設産業に対するイメージは少なくとも90年代以前までは政権との関係が重要視され、民主化が進展した以降には、金融界との結託を通じて大量の資金を融通し、大規模な開発事業を施行する構造を作ってきた。
先に述べた米国発の金融危機で、不動産と金融の結託が表面化したように、韓国の中堅建設会社が倒産の危機を迎えているのも、結局は金融に依存した事業モデルが崩壊しているためだという指摘が多い。
住宅市場の長期沈滞は金融産業がこれ以上、建設産業を支えず、資金運営の自活力がない建設会社は自ら退場することを意味する。
一方で輸出品目としての韓国建設産業は依然として成長を繰り返している。国土海洋部によれば、5月末現在、韓国の海外建設累積受注金額が5000億㌦を超えた。注目すべきは、最近5年間の受注金額が全体累積金額の半分を超える3000億㌦に達し、韓国建設産業の海外受注が急上昇している点だ。
162階、828㍍で世界で最も高いビルであるUAE(アラブ首長国連邦)のブルジュハリファは、サムスン物産の建設部門が施工し、最近では原子力発電所などインフラ関連の大規模プロジェクトの受注が相次いでいる。
このように中東や東南アジアをはじめとする海外市場で韓国は大型プロジェクトを成功させている。これは単に企画や設計能力以外にも先端施工法や材料技術開発などに莫大な投資を続けてきた政府や建設企業の成果といえる。
政府は14年に韓国建設産業が年間1000億㌦の受注金額と10年現在7位の世界シェアが5位に達すると見通している。内需の深刻な沈滞と建設会社の倒産、一方では世界的な建設プロジェクトを次から次へ受注している建設会社が疾走する2つの顔を持つ韓国の建設産業が、現在の韓国経済が直面している実状を表していると言えるのではないか。