◆精巧な技術力で課題克服を◆
第30回ロンドン五輪が終盤を迎えた。ロンドン五輪は3度目で、1948年の第14回大会以来64年ぶりだ。大韓民国の名で初めて参加したのが光復後の48年ロンドン五輪であり、再びロンドンに渡った韓国の現在を考えると感慨無量だ。
金メダルの数が国力や国家の地位をさす訳ではないが、韓国は6日現在で金メダル10個・総合4位。10位以内にランクされたアジア国家は、中国と韓国の2カ国のみだ。潘基文・国連事務総長は開幕式で五輪旗を持ち、ロンドン五輪の公式スポンサー11社にはサムスンを含む。五輪の中継を見るテレビについては、世界のテレビの40%に韓国産ディスプレーパネルが使われている。このように挙げればきりがない韓国と五輪の関係だが、韓国人にとっては、ロンドン五輪が改めて誇りを感じる契機となりそうだ。
一方で、今回の五輪はテロに備えたミサイル配置で緊張感を高め、特定企業の独占的スポンサーシップによる商業主義が広まるとの理由から、五輪に反対するデモがロンドンで起きたという。スポーツイベントを通じて、平和のメッセージを送るという五輪の役割が、限界に来ているのかも知れない。
五輪は委縮した経済に活力を与え、消費を促す契機になっていた。特に世界で同時に中継されるという点で、テレビ市場が期待する重要なイベントであった。だが、4年前の北京五輪と同様、今回のロンドン五輪もテレビ市場の販売実績は例年と変わらなかった。今年1~6月の薄型テレビ販売台数は前年同期に比べて、むしろ2・7%程度減少した。
五輪開催年の薄型テレビ販売が前年を下回ることは、過去には考えられなかった。五輪特需を期待できる産業は、旅行業など直接的関連を持つ産業に制限されつつある。
五輪閉幕後の欧州経済を憂慮する声もある。ユーロ圏の不安定性が現在の世界的景気低迷と金融危機の最も大きな原因に挙がるが、この不安定性が欧州での五輪開催によって抑止されている。ユーロ圏のドイツとフランスを含む主要11カ国の信用等級が下がるとの見通しが出ているが、五輪の華やかさのため見えにくいということだ。
五輪が終われば、世界はユーロ圏の財務動向を不安視するだろう。世界経済は、一層難しい時期を迎えるかも知れない。
世界経済の長期低迷が続く点、とりわけ欧州経済の委縮は、輸出産業への依存度が高い韓国と日本に重くのしかかるだろう。同じ市況であれば、円高の日本が韓国より不利だ。
過去数年間、韓国の電子や自動車産業など主力輸出産業は日本との競争を通じて成長。日本の電子産業は08年以降、引き続く赤字で事業撤収や事業所の閉鎖など強度の事業構造調整を進めた。ところが、主力産業の急成長は深刻な需要市場停滞によって供給過剰につながり、付加価値を下げている。その代表的製品はLCDパネルと薄型テレビだ。
崇高な五輪の精神と平和への願い、記録と限界を超える挑戦や情熱が与える感動、世界の様々な文化を認め合うなど、五輪の肯定的作用はまだ多くある。五輪やW杯などスポーツイベントが国家間の争いや戦争を防ぐということにも共感する。そして、スポーツの政治的活用に対する論議は、より高い水準の知識が必要だが、その結果的機能については誰もが理解しているはずだ。
このような五輪を例えに出すのも的確と言えるか分からないが、今回のロンドン大会では、日本が宗主国となっている柔道種目で金メダル1つに終わった。
独自の技術開発によって新たな競争力を創らなければ、宗主国の栄光を維持することはできない。その点で、日本の半導体とディスプレー産業は柔道と非常に似た状況に置かれている。
柔道の韓日対決で誤審のハプニングがあったが、韓国は確固とした大きな技術を駆使できなければならないだろう。少しでも大きな技術に点を与えるのが柔道の精神だという。
精巧に準備された大きな技術で、韓国の輸出産業が直面した課題を乗り越えることを願っている。