◆アベノミクスより深刻?◆
「アベノミクス」の影響か?韓国企業の経営実績が二極化している。アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略により、2%程度のインフレ目標を達成し、日銀の民間銀行国債買い取りによる資金の市中放出、補正予算13兆円(年内)という膨大な資金による公共事業から景気浮揚へつなげる予定だ。この期待が株価と為替に顕在化した。
金融緩和による景気テコ入れは他の先進国でも進められており、日本と並んで米国、ドイツでも株価が連日最高値を更新しており企業活力が向上している。韓国の株価が下落しているのと対照的だ。
他方、韓国の12年のGDP成長率は年初から各機関が下方修正を繰り返し、2・0%となり、13年第1四半期も0・9%成長にとどまった。これで11年第2四半期の0・8%以来連続8分期1%未満が続き、韓国経済の委縮傾向に歯止めが掛かっていない。表は韓国銀行が4月に公表した12年の企業経営分析(暫定値)の特定項目をまとめたものである。産業の全体的傾向は11年に比べて12年は業績が落ち込んでおり、委縮傾向がそのまま企業活動に表れた恰好である。特に成長性をうかがう総資産、売上額は低下し、そのことが収益性指標にそのまま転嫁し、売上額、営業利益率を引き下げている。こうした経営状況に各企業は配当性向を引き下げ、社内留保率を引き上げて守りの体制に入っている。
同様な企業経営の委縮傾向は別の調査でも指摘されている。報道によると、CEOスコアという企業経営評価サイトがまとめた調査において、総売上高順位500位の企業の12年決算実績を分析し、営業利益総額は138兆ウォンで 11年より4・4%減って当期純益は98兆ウォンで7・8%減少したという。
また、企業別売上げではサムスン電子が201兆ウォンとダントツで、後に現代自動車が84兆ウォン、SKイノベーションが73兆ウォンと続く。グループ別でもサムスンと現代自動車グループが群を抜いている。サムスングループは500大企業内に最多の25会社が含まれ500大企業総売上額の15%の376兆ウォンを占めた。現代車グループも21社、9・7%の243兆ウォンに達する。
他方、大部分のグループは500位以内に占める関連企業比重を減らし、サムスン、現代グループと好対照を示し、企業経営の二極化が深化したと言う。
こうした萎縮現象の要因のうち深刻なのはウォン高と内需不振だ。ウォンは対ドルでは12年10月の1106・93ウォンから13年5月23日の1㌦1112・40ウォンと0・5%のウォン安となったが、同期間の対円では100円=1400・86ウォンから1078・12ウォンと23%のウォン高円安となった。
円安の韓国輸出への影響は、日韓両国の50大輸出品目のうち26品目(52%)が重複する状況で、日本の価格競争力強化が韓国輸出に影響を及ぼしている。
12年12月の対前年比輸出はマイナス6・0%、13年1月10・9%と回復したものの2月0・6%、3月0・1%、4月0・4%と年間輸出が前年を下回った12年ベースを推移しており、今後も円安の影響がさらに出ると予測されている。
内需低迷も深刻だ。13年第1四半期の韓国の民間消費は1年3カ月ぶりにマイナスに転じ、マイナス0・3%となった。4月もデパート売上高が前年同月比1・6%減、ディスカウントストアの売上高が10・3%減となるなど、消費低迷が続いているという。
アベノミックスによる韓国へのマイナス影響が言われるが、サムスン、現代などはそれを跳ね返す企業力を発揮している。円安の影響と言う為替要因もさることながら、企業の二極化といった国内産業構造的な課題がさらに深刻である。企業の成長性を高めるためにも収益性、安定性を築く努力がより一層重要で、企業も守りの体制から脱却しなければならない。