◆長く付き合っていくべき社会現象◆
韓国経済の成長鈍化が深刻化している。先月末、世界銀行と韓国中央銀行が発表した世界発展指数(WDI)の資料によると、昨年度の国家別名目GDPランキングにおいて、韓国は1兆1295億ドルで15位を記録した。韓国の名目GDPは、2004年の11位から08年に15位へ落ちた後、5年間同じ順位にとどまっている。07年に始まった世界的金融危機以来、同国の低成長基調はますます強まっている。また、経済専門家の間では、この状況が続けば韓国経済は日本型長期不況に陥る可能性が高いとの見方も多く、今韓国にとって成長鈍化は大きな懸念材料である。
韓国経済の低成長の背景として、韓国の全国経済人連合会が民間経済専門家42人を対象に行った調査では、低調な消費及び投資(45・2%)、少子高齢化(41・9%)、不動産景気の低迷(12・9%)などの要素が挙げられていた。ここで特に注目したい点は、「少子高齢化」である。韓国は、ここ数年で出生率は急激に低下した一方、医学の発展により1970年に62・2歳だった平均寿命は10年に80・7歳まで伸びており、高齢化が急速に進んだ。今後、韓国の総人口における経済活動人口の比率は、現在の約73%から60年は約53%まで下落し約20%減少すると推測されている。同じく高齢化が進んでいる日本とドイツの場合、同じ期間中の減少率が約10%であることを考えれば、韓国の高齢化のスピードは極めて速い。
高齢化による経済活動人口の減少や高齢者の増加は、国家の生産性を低下させ、福祉、医療、年金などにおける公共財政の負担を加重させる。このように高齢化という現象は、プラスな面よりもマイナスな面が多く経済を減速させる原因として懸念される。特に、高齢者は社会の負担としてみなされ、出生率の向上や経済活動における女性の積極的な活用など、高齢者による負担を軽減させるための対策だけが多く取り上げられているのが現状であった。
しかし、最近、韓国と日本では高齢化社会の高齢者を見る目が変わり始めている。まず、韓国では、政府主導で60歳以上高齢者向けの就職支援センターを設立し、積極的な活用を進めている。今年8月に未来創造科学部は「高経歴科学技術人支援センター」を設立、豊富な経験と知識を持つ高齢の技術人を体系的に管理し活用することで、高齢化が進む科学技術分野における人材確保を図っている。一方、日本でも、高齢者を積極的に活用する動きがみられている。今年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、多くの企業で定年としている60歳を65歳まで引き上げ、希望者には65歳までの雇用を義務付けている。同法の施行開始以来、大手企業を中心に65歳までの雇用延長に踏み込む企業が徐々に名乗り出ており、継続雇用に合わせた賃金体系の見直しや新制度の導入なども増えている。韓国も日本も、高齢化社会を克服するために高齢者の活用に焦点を当て始めているのである。
23年前、筆者が初めて日本に来て不思議に感じたことの一つが、現場で働く高齢者をよく見かけることだった。もちろん、ほとんどが飲食店やスーパー、ビル内の清掃などのパートタイムで働く人々だが、韓国ではなかなか見られない光景だったので、当時はとても印象深く感じた。これからは、韓国も日本も、正規雇用、非正規雇用を問わず、経済の全般においてこのような光景を見たいと思う。
経済成長を図るためには、当然出生率を上げ人口の規模を拡大させるのも重要だが、医学の発展による高齢者数の増加は今後も避けられないことを受け入れなければならない。高齢化は社会における単なる問題ではなく、これから長く付き合っていくべき社会現象であり、活用次第では経済発展における大きなチャンスである。